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【エンスプリング】臨床試験からRMPまで【動画も紹介】

エンスプリング(サトラリズマブ)新薬関連
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2020年6月29日、エンスプリング皮下注120mgシリンジ(サトラリズマブ)が承認されました。

この記事ではエンスプリングの作用機序、臨床成績、アクテムラ(トシリズマブ)との違い、RMPについてまとめています。

参考になる動画についても紹介していますので最後までご覧ください。

【この記事を書いた人】

管理人
管理人

病院薬剤師です。そこそこベテラン。
新薬については主に審査報告書をもとに情報収集しています。

エンスプリングの概要です。

【販売元】
中外製薬株式会社
【効能又は効果】
視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防
【用法及び用量】
通常、成人及び小児には、サトラリズマブとして1回120mgを初回、2週後、4週後に皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。

薬事日報ウェブサイトより

エンスプリングは希少疾病用医薬品に指定されていて、有用性加算がついています。
薬価は153万2660円で、年間だと約2千万円にもなるとか。

お高いくすりですね^^;

米国FDAでも2020年8月17日承認取得されました。

 

管理人
管理人

ちなみに名前の由来は「Enjoy、Spring」に由来するそうです。

どんな薬なのか紹介していきますね。

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視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)とは?

エンスプリングの適応疾患である視神経脊髄炎スペクトラム障害はNeuromyelitis Optica Spectrum Disorder:NMOSDと略します。

NMOSDは視神経や脊髄などに炎症を起こす自己免疫性疾患のひとつです。

これまでNMOSDの再発予防としての治療薬は

  • 経口副腎皮質ステロイド剤
  • 免疫抑制療法(アザチオプリン又はミコフェノール酸モフェチル等):保険適応外

が中心でしたが、2019年11月に新たな治療薬としてエクリズマブ(商品名ソリリス)が承認されたところです。

他には適応外でリツキシマブも使われているようです。

NMOSD発症のメカニズム

中枢に発現している水チャネルAQP4(アクアポリン4)に対する自己抗体(抗AQP4抗体)が病態に関与すると考えられています。

一方で抗AQP4抗体が陰性の患者さんも認められていて、抗AQP4抗体以外の自己抗体が関与する可能性も考えられているそうです。

詳しくは後に紹介する動画もご覧ください。

NMOSDの病態

患者さんの9割は女性で、30~40代で発症する方が多いと言われています。

症状は炎症が起こる部位に応じて異なり、

  • 視神経炎(視力低下、視野欠損、眼痛、色覚異常)
  • 脳の症状(持続するしゃっくり、吐き気、尿崩症、過眠症、片麻痺など)
  • 脊髄炎(麻痺、筋力低下、脱力、痛み、しびれ、排泄障害など)

が代表的な症状です。

NMOSDの未治療の状態での年間再発回数は平均1~1.5回だそうです。再発を繰り返すことで障害が悪化していきます。

再発時の重症度は重度であることが多く、単回の発作で失明や車椅子生活に至ることもあります。

NMOSD患者のうち約35%の患者では最終的に不可逆性の脊髄障害をきたし、そのうち約25%の患者では車椅子が必要となるとも言われていますので、いかに再発予防が大事かが分かると思います。

抗AQP4抗体価が高い患者では重篤な再発をきたす傾向にあります。

エンスプリングの作用機序【動画紹介】

エンスプリング患者用資材より

NMOSD患者では再発時に血清及びCSFでIL-6が上昇するとの報告があります。

IL-6 は以下のような機序でNMOSDの発症に関与していると考えられています。

  • B細胞→形質芽細胞への成熟の促進
  • 形質芽細胞からの抗AQP4抗体産生の促進
  • 血液脳関門の透過性の増加

エンスプリングは、ヒトIL-6レセプターに対するヒト化モノクローナル抗体です。

上記の図のようにエンスプリングは、

  • IL-6レセプターにエンスプリングが先回りして結合
  • IL-6がレセプターに結合できない
  • IL-6シグナル伝達が止まる

といった流れで、NMOSDに対する治療効果を示します。

ちょっと分かりづらいので補足の意味で解説の動画を紹介します。
東北医科薬科大学病院 脳神経外科の中島一郎先生の解説で、エンスプリングの作用機序並びに視神経脊髄炎の他の新薬について分かりやすくまとまっています。

ぜひご覧ください。

視神経脊髄炎の新薬(中島一郎先生)

アクテムラ(トシリズマブ)との違い

エンスプリングはアクテムラと比較して血中濃度維持時間が長くなるように設計されています。
消失半減期はアクテムラ162mg皮下注単回投与で1.6日、エンスプリング120㎎単回投与で4.56日となっており、アクテムラは2週製剤であるのに対し、エンスプリングは4週製剤です。

原理は次のように記載されています。

本剤はIL-6RへのpH依存的結合性を有し、酸性条件下でIL-6Rから速やかに解離する。この特性により、エンドソーム内における抗体-抗原複合体の分解が抑制され、抗体が再び血漿中に戻ることで本薬の血中滞留性に寄与していると考える。

エンスプリング審査報告書P10

これはリサイクリング機構と呼ばれ、インタビューフォームに記載がありました。

エンスプリングインタビューフォームP20
管理人
管理人

半減期が長いことはエンスプリングのメリットですが、逆にデメリットとしては投与中止後16週間にわたってIL-6シグナル阻害が継続するため、免疫抑制作用が体内から消失しないことに注意が必要です。

   

エンスプリングの臨床試験

SA−307JG試験【SAkuraSky】

国際共同第Ⅲ相試験です。

ネーミングが美しいですね。コンセプトは「春」ということなのでしょう。

対象:12~74歳の日本人及び外国人のNMO及びNMOSD患者
デザイン:プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験
主要評価項目:二重盲検期間における初回PDR(治験実施計画書で規定された再発)までの期間

エンスプリング審査報告書P27
エンスプリング審査報告書P28

エンスプリング群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められています。

SA-309JG試験【SAkuraStar】

海外第Ⅲ相試験です。

対象:18~74歳の外国人NMO及びNMOSD患者
デザイン:プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験
主要評価項目:二重盲検期間における初回PDR(治験実施計画書で規定された再発)までの期間

エンスプリング審査報告書P29
エンスプリング審査報告書P30

こちらの試験でもエンスプリング群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められています。

抗AQP4抗体の有無による臨床成績の違い

エンスプリングの臨床試験で機構が重視したポイントとしては、抗AQP4抗体陽性と陰性で有効性が異なるのかどうか?ということです。

両試験では抗AQP4抗体陽性と陰性の患者が含まれており、部分集団解析が行わています。

その結果、抗AQP4抗体陽性の場合はエンスプリング群でプラセボ群と比較して再発リスクが低下しており、再発時の重症PDRの被験者割合も低いことから有効性が示されている、としています。

一方、抗AQP4抗体陰性患者への投与については

  • 有効性は明らかになっていない
  • NMOSDに対する本剤の作用機序が不明
  • 本剤を投与した際にリスクを上回るベネフィットを得られるか不明

であることから、エンスプリングの投与対象は原則として抗AQP4抗体陽性のNMOSDとすることが適切であると判断しています。

エンスプリングの位置づけ

審査報告書にはエンスプリングとソリリスの臨床的位置付けの差異について以下のように記載があります。

  • 直接比較した臨床試験は実施されていないため検討には限界があるものの、いずれの製剤でもNMOSDの再発予防効果が認められている。
  • エンスプリングではIL-6 阻害作用に起因する感染症が、エクリズマブでは補体複合体産生阻害に起因する髄膜炎菌感染症が特に懸念すべき事象と考えられるため、髄膜炎菌感染症の危険因子を持つ又はリスク管理が難しい患者ではエンスプリングが治療選択肢として考えられる。

審査報告書ではここまでの記載ですが、プラセボと比較したNMOSD再発抑制効果はソリリスで3年以上に渡ってほぼ100%という結果(N Engl J Med 2019;381:614-625)がありますのでエンスプリングより優れていると言えるかもしれません。

エンスプリングのRMP

エンスプリングRMPより

アクテムラ(トシリズマブ)と比較すると、重要な特定されたリスクがまだ少ないです。

B型肝炎ウイルス再活性化など、重要な潜在的リスクとなっている項目が今後重要な特定されたリスクになってくる可能性は十分あります。

RMP資材(患者さん用の説明資料)を十分活用して指導に役立てましょう。

まとめ

話題の新薬エンスプリングについてまとめました。

薬価は高額ですが希少疾患NMOSDに対する再発抑制効果が示されていて、待望している患者さんにとっては吉報です。

IL-6を長期間抑制してしまうことがメリットでもありデメリットでもあると思いますので、副作用マネジメントが問われますね。

NMOSDに対する有望な治療薬はCD20をターゲットにしたリツキシマブをはじめCD19モノクローナル抗体のイネビリズマブなど今後もまだまだ出てくるようですので注目していきたいと思います。

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