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硬膜外鎮痛ってスゴイ!術後の痛み止めに使う点滴は?

鎮痛薬
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これから手術の予定なんだけど、傷の痛みって辛いのかな?

手術したら痛くてとても動けないと思うわ。

手術のあとは痛くてたまらない。

そんなイメージがあるかもしれません。

しかし、最近の手術はしっかり痛み止めの点滴(注射)を使って痛みをコントロールすることができるようになっています。

術後に痛み止めを使う理由は何なのか?
術後に使用する痛み止めの点滴にはどんな薬があるのか?

について解説します。

【この記事を書いた人】

管理人
管理人

病院薬剤師です。医療や薬についての正しい知識を提供するように心がけています。

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手術と痛み止め

手術をすると当然ながら傷の痛みが出ます。

昔々は多少痛みがあっても安静が第一、痛みは多少我慢みたいな風潮があり、

痛みがあると・・→動けない、動かない・・→リハビリできない・・→食欲がでない・・→退院できない

痛みがあると・・→動けない、動かない・・→腸が動かない・・→食欲がでない・・→退院できない

といったような負のサイクルに陥っていました。

一方、現在は痛みは「何とかしてコントロールするもの」という考えに変わっており、

  • 痛み止めを使って痛みをなくし早く動けるようにする
  • 早くリハビリを始める
  • 早く飲んだり食べたりして腸を動かす

ことによって早期退院を目指すという流れになっています。

このような術後回復促進策のことをERAS®プログラムDREAM(Drinking, Eating, Mobilizing)と呼び、多くの病院で実践されています。

術後に使用する痛み止めの点滴

術後の疼痛管理についてはSIAARTI(イタリア麻酔科学会)で以下のような提言がされています。

Postoperative pain treatment SIAARTI Recommendations 2010. Short version

Analgesia is a fundamental right of the patient. The appropriate management of postoperative pain (POP) is known
to significantly reduce perioperative morbidity, including the incidence of postoperative complications, hospital stay
and costs, especially in high-risk patients (ASA III-V), those undergoing major surgery and those hospitalized in a
critical unit (Level A).

つまり、痛みをとることは患者さんの基本的な権利であり、術後の痛みを抑えることによって、入院期間が短くなったり、合併症が少なくなったり、コストが安くなったりする、というものです。

これを実現するために手術後に使用される痛み止めを紹介します。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)

一番ポピュラーな痛み止めです。

飲み薬だと、ジクロフェナク(ボルタレン®)、アスピリン(バファリン配合錠A330®)、メフェナム酸(ポンタール®)、ロキソプロフェン(ロキソニン®)、セレコキシブ(セレコックス®)などがあります。

点滴で使用できる薬は、フルルビプロフェンアキセチル(ロピオン静注®)のみです。

良く使用される理由としては

  • 安静時の痛みのコントロールに優れている
  • 呼吸抑制や眠気の心配がない
  • 炎症を抑える効果がある

という特徴があるためです。

副作用としては胃炎や胃潰瘍などの消化管粘膜障害があること、腎臓の機能が悪い場合には悪化させてしまう可能性があること。

短期間に留めれば比較的安全に使用できますし、うまく使えば後述するオピオイドの使用量を減らすことができます

アセトアミノフェン

こちらの記事でも解説していますが、最近になって新たな使い道が開けた(高用量製剤が登場した)古くて新しい薬。

点滴で使用できる薬はアセリオ®静注液です。

NSAIDsと比較して

  • 呼吸抑制や眠気の心配がない
  • 鎮痛効果は十分(高用量で)
  • 胃腸障害、腎機能障害がない
  • 抗炎症作用はない
  • 小児や妊婦での使用経験が豊富

といった特徴があります。

術後の痛み止めはなるべく吐き気や食欲不振、眠気などの副作用が少ないものが理想なので、アセトアミノフェンはまさに術後の痛み止めとしては最適な薬と言えますね。

点滴と飲み薬(と坐薬)があるので、すべての術式で術中~術後に一定の間隔で使い続けることが欧州局所麻酔学会で推奨されています。

他の薬と併用しても問題ありませんし、ベースにしっかり入れることで痛みがコントロールされやすくなります。

注意点としては肝機能障害ですが、栄養状態が悪い場合などを除けばあまり問題になることはありません。

アセトアミノフェンの副作用についてはこちらの記事

オピオイド製剤

NSAIDsでもアセトアミノフェンでも効かない内臓の痛みに対して使う痛み止めです。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルといったいわゆる医療用麻薬です。

麻薬というと怖いようなイメージがあるかもしれませんが、病院内ではきちんと管理していますので中毒になったり廃人になったりすることはありません。

オピオイドは強力な痛み止めではありますが

  • 眠気
  • 便秘
  • 吐き気

という3大副作用があるので、早くリハビリを、早く食事を、という流れに多少なりとも逆らうことになってしまいます。

万一効きすぎた場合には

  • 呼吸抑制

を起こす可能性も。

モルヒネと比べるとフェンタニルのほうが術後の疼痛管理に向いているとはいえ、やはりなるべくなら使用したくない薬です。。

ここで登場するのが硬膜外鎮痛です。

硬膜外鎮痛とは

硬膜外鎮痛は全身にではなく、限られた体のごく一部にだけ作用するように麻酔薬や痛み止めでコントロールする方法です。

局所にだけ作用させるので局所麻酔に分類されます。

出典:薬剤師と臨床研究支援をがんばろうのブログ

針を刺す部位は背中の脊髄の周囲にある硬膜外腔(脂肪や軟部組織がある空間)です。

局所麻酔薬+オピオイド+吐き気止めの組み合わせを入れることが一般的です。

出典:病気のはなし – 公立学校共済組合 関東中央病院 (kanto-ctr-hsp.com)

この方法だと

  • 意識が保たれる
  • 麻酔領域以外はブロックされない
  • 痛くない
  • ストレスホルモンが出にくくなる(交感神経を遮断するため)
  • 消化管の運動が促進される(交感神経を遮断するため)

というメリットがあるんです。

局所にしか使用しないのでオピオイドの副作用が軽減されることになるんですね。

逆に効きすぎると足がしびれたり、吐き気がでたり、尿が出にくくなったりすることには注意は必要ですが、術後の痛み止めしては非常に優れた方法なんです。

まとめ

手術後に使用される痛み止めの点滴についてまとめました。

早いうちに動けること、食べられること、飲めることが術後の回復に重要で、そのためには多くの痛み止めの点滴(注射薬)や飲み薬を使っています。

我慢することでかえって回復が遅れてしまうわけですので、これから手術に臨まれる方は我慢せずに申告することが大切です。

医師、看護師だけでなく病棟にいる薬剤師にも是非相談してみてください。

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