2022年11月、大正製薬の抗肥満薬「アライ®」の承認が了承されました。
厚生労働省は2023年3月末メドに承認とのことでしたので、そろそろいろんな情報がそろってくる頃かな、と思います。
アライ®は処方箋なしで買えるダイレクトOTC。
瘦せ薬が町の薬局で買えるということで、ダイエットに期待する方も多いのでは?
今回アライ®の審査報告書を読んで、注目すべき点をまとめてみました。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
抗肥満薬アライ®(オルリスタット)はどんな薬?
アライ®は食事の際の脂肪の吸収を抑制するはたらきがあります。
作用機序はアライ®が体内の脂肪分解酵素リパーゼのはたらきを阻害することに由来します。
すでに海外100カ国以上で販売されています。
日本での効能効果、用法用量は以下のとおりです。
【効能効果】
腹部が太めな方注)の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組み
を行っている場合に限る)
注)腹囲(へその高さ):男性 85cm 以上、女性 90cm 以上
【用法用量】
成人(18 歳以上) 1 回 1 カプセル
1 日 3 回、食事中又は食後 1 時間以内に服用すること
医師の指示がなくても、町の薬局で買えるというのが最大の注目ポイントです。
アライ®の効果
日本人120例を対象にした長期投与試験の結果をお示しします。
60mgを1日3回、52週間服用後の結果です。(審査報告書P40)
簡単にいうと、内臓脂肪を20%近く減らし、ウエスト、体重、BMIを5%以上減少させたという結果です。
ちなみに過去に抗肥満薬として武田薬品工業のオブリーン®が承認されたのですが、結局販売には至りませんでした。
期待するほどの効果が見込めないという判断に至ったからです。
オブリーン®に比べるとアライ®はそれなりの効果があると証明できたわけですね。
飲める人・飲めない人
アライ®は誰でも飲めるわけではありません。
薬局で購入する際のスクリーニングで基準を満たさないといけないからです。
飲める人の基準はざっとこんな感じ。
- 購入前3か月以上、生活習慣改善の取り組みを行っている
- BMI35以上の高度肥満
- 腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上
- 基礎疾患を持っていない
アライ®服用中は生活改善の記録や体重、腹囲の測定の記録を残す必要があります。
また高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・心筋梗塞・脳梗塞などの病気を経験した人は飲めません。
健康診断でこれらに問題がないということを証明する必要もあるので、なかなかハードルは高そうです。
アライ®の副作用
アライ®について一番気になるのはやはり副作用です。
メインは消化器症状なのですが、その中でも便失禁、油のもれ、便を伴う放屁、切迫排便はアライ®特有の副作用と思います。
たとえ少量であっても便がもれるというのは、オムツをつけるというなら別ですが、許容できない人が多いのではないでしょうか。
併用注意薬
アライ®は脂肪の吸収をおさえる性質があるので、脂溶性薬剤の吸収を低下させる可能性が指摘されています。
代表的な脂溶性薬剤はアミオダロンやシクロスポリンです。
審査報告書ではアミオダロンの血中濃度を有意に低下させると記載されています。
理論的にはアライ®とアミオダロンを併用する際にはアミオダロンの投与量を増やすべきですが、アミオダロンは脈拍や心電図の結果で調整されることが多いため、併用でも投与量を増やすような対処は必要ない、とPMDAは判断しています。
とはいえ、e-learningを受けた薬剤師が販売時にアミオダロン服用歴を確認する必要があるので、お薬手帳は必ず持ち歩きましょう。
まとめ
処方箋なしで購入できる抗肥満薬アライ®についてまとめました。
いくら処方箋なしで購入できるといっても、販売にあたっては薬剤師の確認が必要ですし、飲める人が限られていること、許容しがたい副作用もあることを考えると、爆発的にヒットするようなダイエットの薬ではなさそうです。
そもそもアライ®を飲むような人は生活習慣改善の取り組みができる人じゃないといけないので、薬に頼らなくても適切な食事指導と運動を続けていれば健康的に痩せられるんじゃないのかな‥と思ってしまうのは私だけでしょうか。
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