キノロン系抗菌薬の飲み方、どうやって説明してる?
金属カチオンと相互作用があるから、必ず水で飲むようにって言ってます
今回は薬の相互作用をテーマにします。
相互作用といえば、「キノロン系抗菌薬と金属カチオンの同時投与は避ける」が有名。
なので私、いままで「牛乳と一緒はダメ」と思いこんでいたんですが、実はそうでもないみたいなんです。
今回はキノロン系抗菌薬と牛乳の相互作用について解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
キノロン系抗菌薬は金属カチオンとキレートを形成する
薬剤師として知っておくべき相互作用としてあまりにも有名なのが、キレート形成。
キノロン系抗菌薬は、アルミニウムやマグネシウムなどの金属カチオンを含む制酸剤と同時服用すると、キレート形成し吸収が低下することが知られています。
例えば、シプロキサン錠®の添付文書の併用注意の項には、アルミニウム・マグネシウム配合剤(マーロックス®など)を併用すると効果が減弱するおそれがある‥と記載があります。
これ、実際どれくらい効果が落ちるのかというと、なんとAUCにして88%低下(※)します。
ここまでくると、もはや薬効ないですww
併用注意ではなく禁忌に該当するレベルですから、薬剤師なら必ずおさえておかなくてはいけない相互作用といえますね。
キノロン系抗菌薬の中でも吸収低下の度合いは異なる
なんとなく聞いたことはあったけど‥というのがこちら。
キノロン系抗菌薬の中でも金属カチオンの影響を受けやすいものと受けにくいものがあります。
ざっくり分類するとこのようになります。
影響が大きいもの
- ノルフロキサシン(バクシダール®)
- シプロキサン(シプロキサン®)
- シタフロキサシン(グレースビット®)
- トスフロキサシン(オゼックス®)
- ガレノキサシン(ジェニナック®)
影響が中等度のもの
- モキシフロキサシン(アベロックス®)
- レボフロキサシン(クラビット®)
影響が小さいもの
- ロメフロキサシン(ロメバクト®)
古いキノロンは影響が大きくて、新しいものは影響が小さい、みたいなイメージだったんですが全然違いましたね・・
金属カチオンの種類によって吸収低下の度合いが変わる
さらに併用する金属カチオンの種類によっても影響の度合いが変わります。
キノロン系抗菌薬の場合は
アルミニウム、マグネシウム>鉄、カルシウムといった傾向があるようです。
こうしてみると、キノロン系抗菌薬と金属カチオンの組み合わせによって、同時投与を避ける・避けないの基準が変わってくるのがお分かりいただけると思います。
ちなみにこれをまとめたのがコチラ(愛媛大学病院薬剤部ホームページ DIニュースより)
キノロン系抗菌薬と牛乳の相性は?
牛乳に含まれるカルシウムは金属カチオンとしての影響は小さいので、キノロン系抗菌薬の中で影響の大きいもの(バクシダール®、シプロキサン®、グレースビット®、オゼックス®、ジェニナック®)以外は問題ないと考えて良いようです。
すなわちアベロックス®、クラビット®、ロメバクト®に関しては、牛乳との相性を気にする必要はない、というのが結論でした。(※データ的にもAUCの低下が2-3%にとどまる)
まとめ
今回はキレート形成がテーマでしたが、相互作用のしくみはこれ以外にもさまざまあります。
pH、吸着、CYP、トランスポーターなどなど覚えておくべきことはたくさんありますが、臨床現場に落とし込めるように日々勉強していきたいと思います。
※参考文献
1)杉山正康著 薬の相互作用としくみ
2)大野ら 一歩進んだ相互作用マネジメント 月間薬事 2013.2(Vol.55 No.2)
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