ロキソニンとカロナール。
どちらも痛み止めですが併用していいのかなと迷ったことはありませんか?
病院や薬局で
同時には飲まないで下さい
6時間あけてください
と言われたことがあるかもしれません。
もちろん処方医の指示に従うのが原則なのですが、こういった指示に根拠があるのか?と言われると実はそうでもないんです。
その理由を解説しますのでぜひ最後までご覧ください。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。
医療や薬についての正しい知識を提供するように心がけています。
ロキソニンとカロナールの違い
まずロキソニンとカロナールの違いについて説明していきます。
作用の仕方が違う
いわゆる薬理作用が違います。
ポイントは炎症を抑える効果があるかどうかです。
ロキソニン(ロキソプロフェン)は痛みの原因となる物質(プロスタグランジン:PG)の発生を抑えることで鎮痛効果を発揮します。
PGは痛みの他に腫れや熱感など炎症にも関わっているので、ロキソニンは鎮痛効果と抗炎症効果を合わせもっている薬ということになります。
対してカロナール(アセトアミノフェン)には抗炎症効果はありません。
カロナールは古い歴史がある薬なのですが、実はどのように効果を発揮しているのかについてはまだ良く分かっていません。
(脳内や脊髄内で作用したり、痛みを感じにくくする作用を強めるという説がある)
しかし作用の仕方は「ロキソニンとまったく異なるもの」ということははっきりしています。
ロキソニンと同じ種類の痛み止めと誤解している人も多いのですが、ロキソニンとカロナールは薬理作用はまったく異なるものというのが一つ目の違いです。
鎮痛効果が違う
二つ目は鎮痛効果の違いです。
膝関節痛と股関節痛に対してロキソニンと似た系列の薬(NSAIDs)とカロナールの鎮痛効果を比較した文献があります。(Osteoarthritis Cartilage,19:921-929,2011)
これによるとカロナールはNSAIDsより鎮痛効果が劣るという結果。。
そのせいか日本ではカロナールの鎮痛効果はロキソニンより劣るというイメージが強いです。
しかし最近日本から、急性腰痛に対するロキソニンとカロナールの鎮痛効果には差がなかったという研究が出ました。(J Orthop Sci,23:483-487,2018)
この研究のポイントは、かつて少量しか使えなかったカロナールを海外標準量に合わせて高用量使用した点です。
つまり、少量のカロナールではロキソニンの鎮痛効果にかなわないが、十分量のカロナールを使えばロキソニンと同じくらいの効果はありそうだということですね。
カロナール最大投与量が変更になったお話はこちらの記事をどうぞ。
【関連記事】【温故知新】解熱鎮痛薬「カロナール」の最大量は?
副作用が違う
最後は副作用の違いです。
ロキソニンの副作用は胃粘膜障害、腎機能障害、出血傾向が代表的で、その他にもアスピリン喘息、ライ症候群、インフルエンザ脳症、ニューキノロン系抗菌薬と併用で痙攣、妊娠後期の使用で胎児動脈管早期収縮などがあります。
鎮痛効果はありますが副作用も多く、使用を短期間に留めるなど使い方にはなかなか注意が必要な薬です。
一方カロナールの副作用は肝機能障害です。
高用量、長期投与、アルコールの併用、解毒酵素(CYP2E1)を誘導する薬物との併用で起こりやすいと言われています。
厄介なことにカロナールの添付文書の禁忌の欄にはロキソニンと同じような項目が記載されています。
そのため医療者の中にも、「カロナールとロキソニンは同じ部類の薬である」と誤解を生みやすい状態になってしまっているのですが、実際はカロナールは副作用が少なく安全で使いやすい薬である、というのが現在主流の見解です。
ロキソニンとカロナールの併用処方はOKか?
以上、ロキソニンとカロナールは鎮痛薬ではありながらまったく異なる性質を持った薬です。
相加的な鎮痛効果を期待して両方処方されることもありますし、同時に飲むことも問題ありません。
ロキソニンは通常1日3回、1日3錠までなので1錠飲んだら6時間程度は間隔を空けます。ロキソニン服用中に痛みが出た際には時間を気にせずカロナールを追加して問題ありません。
ただしカロナールの1回あたりの使用量は200mgでは不十分なことがあり、痛みの状況によってはより高用量必要な場合もあるかもしれません。
※ロキソニン、カロナールの1回量、1日投与量は患者さん一人一人状況によって異なりますので医師・薬剤師に確認してください
まとめ
ロキソニンとカロナールの併用は問題ないということの解説をしました。
依然として医療者の中でも両者を混同している人がいるのですが、併用してはいけないという根拠はなく、むしろより効果的な場合のほうが多いと思われます。
カロナールが小さいお子さんや妊婦さんにも使用できるという点も安全性の担保を物語っていますね。
痛みを我慢するのはとても辛いこと。
どちらかで良い時もあれば、両方必要な時もあるかもしれません。
両者の違いを知り、医師・薬剤師の説明を受けたうえで正しく薬を使っていきましょう。
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