緑茶とかワインに入っているポリフェノールって抗酸化作用があって体にいいんだよね。
最近、健康のためにポリフェノール入りのルイボスティーを良く飲むようにしてるの。
健康志向の高まりとともにポリフェノールの抗酸化作用が注目され、健康食品として取り上げられることが増えています。
そんなポリフェノールですが、、、
良い面ばかりが強調される一方で、実は妊娠後期の女性がポリフェノールを過剰に摂取してしまうことによってお腹の赤ちゃんに悪い影響を及ぼすということが徐々に分かってきています。
今回は妊娠とポリフェノールについて解説します。
正しい知識を知って赤ちゃんを守りましょうね。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療や薬に関する正しい情報を提供するように心がけています。
ポリフェノールとは?
ポリフェノールとは、植物から合成されるフェノール性の水酸基を複数もつ化合物のことです。
ポリフェノールの種類は5000種類もあるといわれています。
構造上の特徴からいくつかの種類に分けるのが一般的なのですが、最も多いものがフラボノイド類で、その他フェノール酸類、リグナン類、スチルベン類などがあります。
代表的な食品は
- フラボノイド・・緑茶に含まれるカテキン、味噌に含まれるイソフラボン
- フェノール酸・・コーヒーに含まれるカフェ酸
- リグナン・・ごまに含まれるセサミン
- スチルベン・・ブドウに含まれるレスベラトロール
コーヒーや緑茶の苦み・渋みは独特の味を引き立てますし、赤ワインの赤、カレーの黄色い色素も見た目に人の食欲をかきたてます。
このようにポリフェノールは日常のさまざまな食品に含まれていて、生活を密接な関係があることが分かりますね。
妊娠中のポリフェノールと赤ちゃんへの影響
ポリフェノール過剰摂取による「胎児動脈管早期収縮」
良い効果ばかりに目が行きがちなポリフェノールですが、2015年ごろから妊娠中の過剰摂取による良くない影響について報告されるようになってきました。
どんな悪影響があるのかというと、ポリフェノール過剰摂取によって妊娠中の赤ちゃんの動脈が細くなり、心臓や肺の機能がうまく働かなくなるという病気が起こりやすくなってしまうんです。
専門用語ではこの病気を「胎児動脈管早期収縮(PCDA)」と呼びます。
PCDAは未熟児の治療を担当する医師には比較的広く認知されているようですが、赤ちゃんに詳しいと思われる小児科医、産婦人科医、助産師であっても、実はあまり認知されていない疾患のようです。
ポリフェノールがPCDAを引き起こすメカニズム
実は妊娠後期に非ステロイド性抗炎症薬という種類の痛み止めで同じ現象が起きることが分かっています。
有名な薬はロキソニン、ボルタレン、イブプロフェンなどです。
現在この痛み止めは危険性があるため、妊娠後期の妊婦さんには使用してはいけないことになっています。
徐々に分かってきたことですが、どうやらポリフェノールは非ステロイド性抗炎症薬を飲んだ時と同じような作用を示すようなんです。
詳しく説明すると・・
妊娠後期には動脈を広げる酵素(COX-2)が増加している
↓
ポリフェノールはCOX-2の働きを抑える(痛み止めも同様の作用がある)
↓
胎児の動脈管が広がらなくなる
というメカニズムです。
海外では2009年ごろから報告されるようになってきていますが、世界的にもここ10年くらいで徐々に分かってきたトピックスです。
緑茶がポリフェノール過剰摂取につながる
実際に緑茶を飲んでPCDAが引き起こされたという症例報告があります。
(日本周産期・新生児医学会雑誌 第54巻 第3号 P891-897)
この症例では出産の1か月前から豆乳を1日1本、2週間前から煎じた緑茶を1日2杯摂取しています。
この豆乳に含まれているポリフェノールは40mg、緑茶2杯分のポリフェノールは740mgだったそうです。
日本人の飲料からのポリフェノール摂取量は1日あたり853±512mg(10~59歳の日本人男女8,768名を対象)であると推定されており(田口ら 2017)、それと比べると1日に摂取したポリフェノールの量が決して過剰ではなさそうですが、思ったよりも少ない量でも危険性があるということかもしれません。
ポリフェノールは緑茶だけではない
ポリフェノールは緑茶だけに含まれるのか?というと、そうではありません。
国内でポリフェノール摂取によってPCDAが引き起こされたという報告は
- カモミールティー
- アサイー果実濃縮ジュース
- 濃縮プルーン
- 野菜ジュース
- 紅茶
- マテ茶
- ブドウ
- ダークチョコレート
- オレンジジュース
- 青汁
- ドライフルーツ
- ローズヒップティー
- ノンカフェインコーヒー
- 豆乳
などなど、多数あります。(日本周産期・新生児医学会雑誌 第54巻 第3号 P891-897)
なかでも、飲料からの摂取は食物よりも摂取量が多くなりやすいようです。
飲料では特に
- コーヒー
- 緑茶
- 紅茶
- チョコレート飲料
- ビール
に注意したほうが良いという報告もあります。(J Agric Food Chem 2009;57:1253-9)
少なくとも安全であるとは言えないわけですので、妊娠後期(妊娠30週以降)にはこれらの飲料を積極的に摂取することは避けたほうがよいでしょう。
まとめ
妊娠後期のポリフェノールの過剰摂取が赤ちゃんに与える影響についてまとめました。
ポリフェノールの摂取量、摂取を控えるべき具体的な食品・飲料名についてはまだ不明な点もありますが、少なくとも30週以降にあえて積極的に摂取するのは現時点では危険な行為と言えます。
くれぐれもポリフェノールは体に良いので妊娠中も積極的に取りましょう!というような発信には惑わされないでくださいね。
身近に妊婦さんやこれから妊娠を考える女性がいらっしゃったら間違った情報に振り回されず、正しい知識を広めて頂ければ幸いです。
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