持参薬の確認をしていると、時々セレスタミン®を見かけることがあります。
セレスタミン®って配合剤なのですが、何と何がはいっているか知っていますか?
知らずにいると痛い目に合いますので、ぜひ覚えておきましょう。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
セレスタミン®配合剤とは
セレスタミン®は抗アレルギー薬です。
セレスタミン®の他、サクコルチン®、エンペラシン®、ヒスタブロック®、プラデスミン®、ベタセレミン®という商品名でも販売されています。
蕁麻疹や湿疹、花粉症でよく処方されます。
配合されている成分はd-クロルフェニラミンマレイン酸塩とベタメタゾンです。
d-クロルフェニラミンマレイン酸は商品名がポララミン®という薬で、抗アレルギー効果を示します。
ベタメタゾンはステロイド剤で、商品名はリンデロン®です。
実は医療従事者の中にもセレスタミン®にリンデロン®が入っていることを知らない人がけっこういます。
セレスタミン®は急性期にしか使わないはず
セレスタミン®の保険適用疾患は急性蕁麻疹、急性期の湿疹・皮膚炎群とその急性増悪期、薬疹、アレルギー性鼻炎です。
なので、基本的にセレスタミン®は急性期の短期間にしか使わないものであるはず。
ですが、実際は長々と何年も飲んでいる人がちらほら・・。
処方医が知ってか知らずかは分かりませんが、知らないで処方し続けているのだとしたら恐ろしいことです。
ベタメタゾンを長々と飲んでいると・・?
問題はベタメタゾンの長期投与です。
セレスタミン®1錠にはベタメタゾン0.25mgが含まれています。
ベタメタゾンはプレドニゾロンの10倍の力価があるので、プレドニゾロン2.5mgに相当します。
これは健康成人が生理的に分泌する量の1/2。
1日2錠だとすると生理的分泌量と同じになってしまいますし、添付文書で最大の8錠だとするとその4倍、すなわちプレドニゾロン20mgを毎日飲んでいることと同じ状態です。
さらにベタメタゾンはプレドニゾロンより半減期が長いので、体内に長くとどまります。
ステロイドを長く飲むとどうなるか…、、
そう、それは副腎の委縮です。
セレスタミン®の漫然投与で痛い目にあった症例
症例報告ベースでセレスタミン®の漫然投与によって医原性副作用を起こした例を紹介します。
〇副腎皮質ホルモン・抗ヒスタミン配合剤(ヒスタブロック®配合錠)の術前休薬により医原性副腎皮質機能低下症をきたした横行結腸癌と胃癌の同時性重複癌の1例(新薬と臨床 2020;69:746-750)
近医から皮膚炎に対しヒスタブロック®が10年以上処方されていた。術前に漸減することなく休薬したところ、全身倦怠感、難治性の低Na血症、食欲不振が出現。ヒドロコルチゾンによるステドイド補充を行ったところ速やかに全身状態は改善した。
〇遷延する低血糖を呈したセレスタミン®(ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸配合剤)による医原性副腎不全の1例(小児科臨床 2014;67:1225-1230)
乳児期から気管支喘息に対しセレスタミン®0.5錠を間欠的に約3年間内服していた4歳男児。発症当日朝からの経口摂取不良、けいれん、傾眠で受診。遷延する低血糖、著明なコルチゾール低値を認め、ヒドロコルチゾンを補充を行った。1年5か月後もコルチゾールの低値がみられている。
いずれも長期のステロイド投与によって視床下部-下垂体-副腎皮質系のネガティブフィードバックが起こり、副腎機能が働かなくなってしまったことが原因です。
副腎機能抑制は、投与量・投与頻度・半減期にもよりますが、およそ2週間から2か月で十分成立してしまうと言われています。
セレスタミン®を飲んでいる期間が長いなと思ったら、まず処方理由を確認し、継続について医師に疑義照会をする必要があります。
そのうえで患者さんには急な中断によって食欲不振、全身倦怠感、嘔気、体重減少、皮膚委縮、頭痛、発熱などの症状がおこるため、自己判断でやめないように指導したほうがよいでしょう。
ステロイド離脱のためのポイント
長期にステロイドを飲んでいた場合、副作用を最小限にとどめる方法は緩徐に減量していくことです。
ポイントは
- 半減期が中等度のステロイド(プレドニゾロン)を使用する
- 朝1回単回投与にする
- 隔日投与へ移行する
漸減スピード、隔日投与への移行時期、中止可能時期は個々の症例によってまちまちのようですが、完全に中止できるには少なくとも数か月~1年程度はかかるのが通常なので、かなり面倒くさいことは間違いありません・・。
まとめ
不要な薬はついつい減らしがちですが、セレスタミン®については知らずに中断してしまうと思わぬ痛手を被ることになります。
一旦は継続とし、その後漸減への道筋を導いてあげるのが薬剤師の役割ではないかと思います。
不適切な使用で患者さんが痛い目に合わないように、セレスタミン®を処方する医師にはぜひ覚えておいてもらいたいものです。
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