いよいよコロナワクチン接種が始まりますね。
私の周り(医療従事者)でも何となく打ちたくないな~という人が多いのですが、自分で情報を確認して判断しているという人は少なくて、マスコミの影響を受けすぎてるような印象です。
医療従事者でもそうなんですから、一般の方はもっと不安ですよね。
(ちなみに私の職場(薬剤部内)ではきちんと説明したら全員が打ちたいと希望しています)
打ちたくないのはきっと「良く分からないから」これに尽きると思います。
というわけで、間もなく承認になるであろうファイザー社とモデルナ社の2つの新型コロナワクチン(mRNAワクチン)に関して分かっていること、分かっていないことについて紹介します。
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
世界的に権威のある医学雑誌であるNew England Journal of Medicineの情報を訳しています。(2021年1月11日時点)
ワクチンそのものでコロナに感染することはあるの?
米国で承認されているコロナワクチンはPfizer/BioNTech社の開発したmRNAワクチン(BNT162b2)とModerna社の開発した(mRNA-1273)です。
どちらのワクチンも、これまでにない機序のワクチンでメッセンジャーRNA(mRNA)を介して機能します。
mRNAは分かりやすくいうと、SARS-CoV-2「スパイク」タンパク質を作るための設計図の運び屋。
ワクチンが投与された後、体内でどのように作用して免疫機能を活性化させるのか、についてはこちらをどうぞ。
コロナウイルスの遺伝子の一部を利用していますが、ウイルス自体を使っているわけではないのでワクチンによってコロナウイルスに感染することはありません。
ワクチンは有効なの?
どちらのワクチンも「ランダム化プラセボ対照試験」という最も強力なエビデンスのある臨床試験で有効性を証明しています。
有効率はどちらも95%近くあります。
これはワクチンを打たなかった人に比べて打った人はコロナ発症確率が20分の1程度まで低下する、ということを示します。
この数値はインフルエンザワクチンの有効性をはるかに凌いでいて、短期的には麻疹(はしか)ワクチンの有効性に匹敵します。(長期的な有効性はまだ不明)
さらにワクチンを打つことによってコロナで重症化する確率が低下することも分かっています。
ワクチンの最大の効果を得るには2回接種が必要ですが、効果が現れ始めるのは1回目の接種後10~14日あたりからです。
ワクチンの効果はどれくらい続くの?
mRNAワクチンの臨床試験開始は2020年の夏からなので、長期的な効果の持続性については不明です。
Moderna社のワクチンの第1相試験のデータでは、中和抗体が4か月近く持続することは示唆されています。
抗体価は時間とともに低下していきますが、いつまでコロナ発症リスクを抑え続けられるかは不明です。
追加免疫(3回目以降の接種)については今のところ情報はありません。
ワクチンを打てば他の人に感染させることはないの?
ワクチンを打てば他人に感染させる心配がない?かどうかははっきり分かっていません。
Modernaの臨床試験では
1回目のワクチン接種時に鼻咽頭PCRで陰性+無症状の人のうち、2回目の鼻咽頭PCRで陽性だったのはプラセボ群で39人(0.3%)、mRNA-1273群で15人(0.1%)だった
というデータがあり、1回の投与でもワクチンが無症候性感染の予防に効果があるのではないかと示唆されていますが、この点もはっきりは分かりません。
ワクチンの短期的な安全性は?
そもそも100%安全なワクチンというのはあり得ません。
どんな薬でもワクチンでもリスクはあるので。
メディアではごくごく稀な副作用が過度に強調されて報道されてしまうことがあるので、見た人が不安に煽られやすいですが、報道されるリスクは我々がコロナに感染するリスクよりはるかに低いということを知っておくべきです。
Moderna社のワクチンのアナフィラキシーについての報告によると、2020年12月21日から2021年1月10日の間に報告された4,041,396例の初回投与のうちアナフィラキシーの検出は10例です。
これは100万回投与のうち2.5例に過ぎません。
10例中9例では接種後15分以内に発症しており、アナフィラキシーに関連した死亡は報告されていません。
コロナワクチンは全世界で1億4000万回以上(2020年2月10日時点)に投与されていますが、重大な副作用で中止勧告が出たりする事態にはなっていません。
最も一般的な副作用は、投与後12〜24時間の注射部位の痛み。「重度」の痛みを経験したのは全体の1%でした。
その他の副作用としては倦怠感と頭痛が一般的で、高熱はあまりないようです。
これらの副作用は数日以内に消失し、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬を使って症状を和らげることも可能です。
年配の人よりも若い人のほうが症状は出やすく、2回目のほうが1回目よりも多くの全身症状を経験しやすいようです。
「ベル麻痺」という副作用がプラセボよりもワクチン接種者でより頻繁に報告されましたが、明らかにワクチンが原因であると結論づけるだけの症例数ではなく因果関係ははっきりしていません。
「ギランバレー症候群」や「横断性脊髄炎」の症例は報告されていません。
ワクチンの長期的な安全性は?
2つのワクチンいずれも承認されるまでにかかった期間が1年未満なので長期的な安全性は不明です。
米国ではワクチンに関する安全性データは、随時ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に集積されているそうですので、今後のデータの解析結果を確認していく必要はあります。
mRNAが体内に残り続けたり、がん化したりするリスクがないのか?についてはこちら。
そもそもタバコのほうがよっぽどDNAを傷つけてがん化させるリスクが高いです・・
1回目と2回目のワクチンを別にしてもよい?
最初にどちらか1つのワクチンを使用し、2回目に別のワクチンを使用することについては、安全性、有効性のデータがなく推奨されません。
ワクチンを打ってはいけない人は?
- 過去にmRNAコロナワクチンまたはその成分(ポリエチレングリコール[PEG])に対して重症のアナフィラキシー反応を示したことがある人
- ポリソルベートに対して重症のアナフィラキシー反応を示したことがある人(PEGと交差反応を起こすことがある)
他のワクチンでアナフィラキシーを起こしたことがある人でもコロナワクチンの接種は可能ですが、投与を受けてから少なくとも30分間観察する必要があります。
もし1回目の投与でアナフィラキシーを経験した場合、2回目は受けるべきではありません。
もし1回目に激しい痛みを経験した場合、2回目を打つかは個々に判断することになります。
2回目の副作用は1回目より悪化する傾向があるので、2回目の投与後に痛みが出始めたらすぐにアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを投与することが有効かもしれません。
CDCは、理論的にはワクチン誘発性の抗体反応を鈍らせる可能性があるため、解熱鎮痛薬をワクチン前に開始することは推奨していません。
ハチ刺されや花粉症のアレルギーがあっても打って良い?
特に問題はありません。ただし、ワクチン接種後30分間は経過観察する必要があります。
免疫不全の人は打って良い?
CDCによると免疫不全の患者はCOVID-19重症化リスクが高いので、ワクチンを接種するべきとしています。
具体的には
- 癌
- 骨髄移植
- 固形臓器移植
- がん治療のための幹細胞移植
- 遺伝的免疫不全
- HIV
- 経口または静脈内コルチコステロイド、または免疫抑制剤使用中(例:ミコフェノール酸、シロリムス、シクロスポリン、タクロリムス、エタネルセプト、リツキシマブ)
Pfizer/BioNTechおよびModernaワクチンには生ワクチンではないため、ウイルスが蔓延するリスクはありません。
ワクチン中の抗原が拒絶反応のリスクを増加させたり、自己免疫疾患(リウマチまたは他の自己免疫状態の患者の場合)のいずれかを引き起こすかどうかは不明ですが、臨床試験ではプラセボと比較してワクチンを接種した研究参加者の自己免疫状態または炎症性疾患の発生に違いは見られていない、ということです。
免疫不全の患者の場合は一般の人よりもワクチンの効果が低くなる可能性がありますので、マスク、3密回避、手洗い、ソーシャルディスタンスの徹底が必要です。
また、例えば化学療法中の患者が治療を遅らせたり、中止してワクチンを接種することについては良く分かっていません。
妊婦、授乳婦はワクチンを打つべき?
妊娠中および授乳中の女性は臨床試験に登録されていないので、安全性に関するデータが限られているのですが、CDCは妊娠中および授乳中の女性でもワクチン接種は可能というスタンスのようです。(※現時点で日本で許容されるかどうかは不明です→日本でも妊婦にも使用可能という判断になりそうです。2021年2月13日追記)
その根拠としては、mRNAワクチンが妊娠中の母親、発育中の胎児、または授乳中の乳児に有害であるという理論的な理由がなく、Modernaワクチンを接種した妊娠中のラットは、胎児または胚の発育に関連する安全上の懸念を示さなかったというデータがあるためです。
インフルエンザウイルスに関しては、妊娠中の女性は重症化のリスクがあるということが分かっているので妊婦さんは積極的に打つべきとなっていますが、COVID-19についても観察研究で「妊娠はCOVID-19の重症化リスクである」ということが示されているため、今後妊婦に積極的に打つべきというエビデンスが出てくるかもしれません。
2021年1月25日時点で、日本産婦人科感染症学会ホームページにてCOVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へが公開されています。妊婦をワクチン接種対象者から除外することはしない、という見解です。(2021年1月26日追記)
2021年1月29日時点で、WHOは「高リスクの妊婦にはワクチン接種を推奨する」というスタンスです。(2020年1月30日追記)
何歳から何歳まで打てますか?
Pfizer/BioNTechワクチンは16歳以上の患者に、Modernaワクチンは18歳以上に認可されています。
現時点ではどちらのワクチンも小児に投与はできません。
最大年齢制限というのはありません。
高齢であることはCOVID-19 の重症化リスクであることがわかっているので、高齢者はワクチン接種が強く推奨されています。
まとめ
New England Journal of Medicineに記載されているmRNAワクチンについてのQ&Aを紹介しました。
コロナワクチンのQ&Aについては信頼できる情報サイトが次々に出てきています。
日本薬剤師会「薬剤師から一般の方々に向けた新型コロナウイルスワクチンに関するFAQ」の公表について
マスコミの報道を見ていると何だか心配になることもあるかもしれません。
打ったほうがいいのかどうか迷ったときはこうした情報源にアクセスして冷静に判断されることをおススメします。
こちらの本もおススメ。今最も信頼できるコロナワクチンに関する書籍です。
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