カロナールは腎機能悪い人には使っちゃダメなんだよね。添付文書に書いてあるから。
いいえ。2023年に添付文書が改訂されて、OKと認められたんですよ。
今までカロナールは腎機能悪い人には使えない、という文言が2023年10月の添付文書改訂で消えました。
個人的には今さら感が強く、そんなこと気にせずにバンバン使っていたお医者さんのほうが多かったんじゃないかなと思いますが・・。
なぜカロナールの禁忌が見直されることになったのか理由は分かりますか?
今回はカロナールの添付文書改訂の経緯についてまとめます。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
カロナールの禁忌が見直された経緯
改訂前のカロナール(アセトアミノフェン)の禁忌項目は7つありました。
- 消化性潰瘍のある患者
- 重篤な血液の異常のある患者
- 重篤な肝障害のある患者
- 重篤な腎障害のある患者
- 重篤な心機能不全のある患者
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者
今回上記の禁忌項目のうち、「重篤な血液異常」と「重篤な腎障害」の2点について、日本運動器疼痛学会が令和5年2月に禁忌解除の要望を厚生労働省に出していたのが認められたというわけです。
また、「消化性潰瘍」「心機能不全」「アスピリン喘息」についても改めて精査を行った、という経緯です。
そもそもなぜ上記7つの項目が禁忌設定されたのでしょうか?
簡単に言うと、
1994年の医薬品再評価結果で、アセトアミノフェンがNSAIDs(アスピリン、インドメタシンなど)と同じ部類の薬剤として一括りにされてしまった
からという理由のようです。(1984年5月作成の添付文書では肝障害も腎障害も禁忌ではなかった)
禁忌が外れた理由
海外の記載
PMDAがまとめたところによると、海外添付文書の記載は次のようになっているようです。
・海外で上記の赤字で記載した5集団が禁忌に指定されている国はなかった。
・腎障害患者についての記載は以下のとおり。
多少の記載の違いはあれど、「腎機能障害患者には使用できる」というスタンスです。
成書、ガイドラインの記載
国内・海外の各種成書、ガイドライン、文献が精査されています。
分かりやすくまとまっている表がありました。
心不全に関してもNSAIDsとは異なり、末梢におけるCOX阻害効果がないため、腎虚血作用がなく安全に使用できるというのが、成書・ガイドラインの記載です。
アスピリン喘息への使用は、基本安全だけれども1回量は300mg以下がよさそう、という結論になっています。
これらを踏まえて、精査を行った以下の5つの集団に関しては禁忌が外されることになりました。
- 消化性潰瘍のある患者
- 重篤な血液の異常のある患者
- 重篤な腎障害のある患者
- 重篤な心機能不全のある患者
- アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者
改訂されたカロナールの添付文書をうけて
改訂後の添付文書はこのようになっています。
禁忌は2項目だけになりました。
この改訂を受けて、患者さんに配布するアセトアミノフェン製剤の薬剤情報文書に、胃腸障害や腎障害についての記載があった場合は訂正する必要があります。
もしかすると患者さんや他の医療従事者から、今回の改訂に至った経緯を聞かれることがあるかもしれませんので、こんな経緯なんですよ、と説明できると良いですね。
まとめ
アセトアミノフェンの添付文書の禁忌が見直される経緯をまとめました。
もともとは学会の要望があってのことだったのですね。
2月申請→10月改訂というスピーディーな対応だったのかなと思います。
薬剤師の中にもカロナールが腎障害に使えないと思って疑義照会される人がいるようですので、ぜひ今回の改訂はおさえておきましょう。
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