記憶を失うまでお酒を飲むと認知症になりやすいかも・・
2020年9月にこんな報告が権威あるアメリカの雑誌に報告されました。
お酒の量は認知症に関係あるの?ないの?
今回はそんな疑問を解決すべくお酒と認知症の関係について解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。高齢者の薬物療法に興味があります。
お酒と認知症の関係~これまで分かっていること~
お酒を飲むと認知症になりやすいの?
この疑問については実はまだよく分かっていません。
短期的な影響と長期的な影響の2つに分けて考えてみます。
短期的(一時的)には、いわゆる酔っ払った状態で分かる通り、認知機能を低下させます。
長期的(長年に渡って飲酒を続けた状態)にみた場合には、(意外にも!)実験室レベルで少量のお酒はアルツハイマー病やパーキンソン病の原因物質から神経細胞を保護したという報告(Neuropharmacol 61:1406-1412,2011)があり、実際疫学調査でも認知症のリスクを下げる可能性が示唆されています。
ただし一貫した結果は示されていないため、よく分かっていないというのが正直なところです。
一方、長期かつ多量のお酒は脳の機能や構造にダメージを与えることが分かっていて、認知症のリスクになるのでは?と言われています。
そこで今回の論文です。
お酒と認知症の関係~今回分かったこと~
JAMA Netw Open. 2020;3(9)
日本語の表題は
アルコールによる記憶喪失と多量のアルコール摂取は、将来の認知症リスクを増加させるのか?
この論文のPICOです。
P:登録時点で認知症を発症しておらず、アルコールを摂取する男女131,415人
I:中等量のアルコールと多量のアルコール摂取
C:飲酒で記憶を失なわなかった人
O:認知症の発症率
結果の要点です。
・多量の飲酒によって認知症のリスクが1.2倍に増加
・過去12カ月以内に飲酒で記憶喪失を1回でも経験した人はしない人と比較して認知症発症リスクが2倍に上昇
・お酒の量が中等量でも多量でも、記憶喪失を経験した人はしない人と比較して認知症発症リスクが2倍に上昇
飲酒での記憶喪失は、お酒の量が多量・中等量どちらであっても認知症の長期的な危険因子である可能性がある
お酒と認知症の関係~考察~
症例数が多く、経過も長期間で追っているのでインパクトが大きい研究だと思います。
この論文で言えることは
- 飲酒で記憶喪失した人は認知症になりやすい
ということでした。
お酒自体も多少認知症のリスクを上げるということも言えそうですが、それ以上に記憶喪失したかどうかの影響のほうが大きかったのは興味深いです。
とはいえ、記憶喪失するまでお酒を飲む人自体が、もともといろんな認知症のリスクにさらされていたので認知症になりやすかったのかもしれませんし、あくまでも一つの結果と捉えて良いのかなと思います。
ちなみにこの論文でのお酒の量の目安は
中等量:1-14単位/週(エタノール112g)・・日本酒で5.6合
多量: 21単位/週 (エタノール168g)・・日本酒で8.4合
くらいと思われます。
1日あたりに換算すると日本酒なら1合、ビールなら500ml1缶が中等量と多量の境目になりそうですね。
お酒とアルコール依存症
お酒で問題となるのは認知症のほかに依存症もありますよね。
アルコール依存症で問題となった有名芸能人も話題になりました。
アルコール依存症というのは実はだれにとっても身近なもので、お酒を飲むのが習慣化していればあなたも依存症かもしれない、、と精神科医のゆうきゆう先生は言っています。
アルコール依存症について気軽に読めるこちらのマンガは、ゆうき先生の著書でキャラクターとテンポの良さにあっという間に読める名著。
お酒が習慣化している方は一度読んでみては?
まとめ
いかがだったでしょうか。
結局のところ、お酒の量が多すぎるのもいけませんし、量に関係なく記憶を失うまで飲むこともダメということなので、お酒は記憶を失わない程度に少量に留めましょう、というごくごく当たり前の結論でしたね。
「酒は飲んでも飲まれるな」
1週間に飲むお酒の量と記憶喪失には注意しましょう!
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