まだまだ流行が続く新型コロナウイルス。もはやマスクをして過ごすことが日常になってしまいましたね。
そんなマスクですが、本当に効果があるのでしょうか?
友達がコロナ陽性だったみたい。
15分以上一緒にいたけど大丈夫かな?
もしあなたがこんな状況になってもマスクをしていれば、濃厚接触者には該当しないって知っていましたか?
マスクって実はすごいんです。
(もちろんマスクだけではダメですけどね)
この記事では、濃厚接触を回避できるマスクの効果について解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。そこそこベテラン。
正しい医療情報を提供することを心がけています。
濃厚接触の定義
まず、濃厚接触の定義を確認しましょう。
濃厚接触かどうかを判断する上で重要なポイントは
「距離の近さ」と「時間の長さ」。
国立感染症研究所の濃厚接触の定義によると
●「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
国立感染症研究所ホームページ 新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)より
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。
ポイントは4つ目の項目。
要するに、新型コロナウイルスは発症前から感染力があるので
感染者と発症前2日前から
- 距離が1m未満
- 感染者も自分もマスクをしていない
- 15分以上一緒にいる
の3条件を満たしたとき、濃厚接触と判断されます。
ですので、
- ソーシャルディスタンスが保たれていた
- あなたか相手のどちらかがマスクをしていた
- 15分も一緒にいなかった
のどれかがあれば濃厚接触には当たりません。
ただし、これにカラオケで歌う・大声を出すといった行為があったとすると感染率は増加しますので最終的には保健所が判断することにはなりますが、、
マスクをしているだけで濃厚接触は避けられることを覚えておきましょう。
マスクは本当に効果があるのか?
実際マスクにはどの程度の効果があるのでしょうか?
マスクの効果について実証した論文があります。(Lancet 2020; 395: 1973–87)
この論文では新型コロナウイルスを含めたコロナウイルスに対する、距離、マスク、フェイスシールドの感染予防効果を検証しています。
下の図はこの論文の結果を分かりやすくまとめたものです。
- ソーシャルディスタンスなしでの感染 12.8%
- ソーシャルディスタンスありでの感染 2.6%
- マスクなしでの感染 17.4%
- マスクありでの感染 3.1%
- フェイスシールドなしでの感染 16.0%
- フェイスシールドありでの感染 5.5%
この論文ではマスクをつけている人はつけていない人に比べて感染リスクが0.15倍(約7分の1)に小さくなると結論しています。
この研究の質自体は特別高いものではないですが、2020年6月以前までWHOは健康な人が着用しても感染を予防できる根拠がないとしていたのにも関わらず、その後マスク着用に関する指針を大幅に変更するなど、世界中でマスクの効果が見直されています。
マスクをする目的は2種類ある
多くの人が誤解していることですが、マスクをする目的には2種類あります。
一つは
①相手から曝露しないため。
もう一つは
②「あなたの唾液、鼻水、痰が会話や咳によって他人に広がるのを防ぐ」
ためです。
実は使用目的によって選ぶマスクは異なります。
代表的な3種類のマスク(N95、サージカル、布マスク)を比較してみたいと思います。
N95マスク&サージカルマスク&布マスク
N95マスク
N95マスクは高性能のマスクで名前の由来は以下のとおりです。
N95マスクとは、0.3μm以上の微粒子※を95%以上遮断し、かつ着用している部分からの空気の漏れ率を10%以内に抑える機能のあるマスクです。
サラヤ株式会社ホームページより https://med.saraya.com/kansen/ppe/kaisetsu/mask.html
顔にしっかりフィットするものを選ぶことで、空気感染する結核や麻疹などから着用者を守ります。
※ここでいう0.3μmとは動力学的質量径(粒子の密度を考慮した数値)であり、数量中位径(実際の粒子の大きさ)で表すと0.075μmとなります。
コロナウイルスの粒子径は0.1μmくらいですので、N95マスクはぎりぎりのところでコロナウイルスを捕集できるマスクということになります。
高性能であるN95マスクをつける目的は、
①マスクをつけた人自身を守るためです。
しかしN95マスクは正しくつけた場合、呼吸が苦しくて長時間は耐えられません。
ですのでN95マスクは医療現場で使用するものであり、マスクの着脱方法や感染対策の基礎を身につけた医療従事者が使用するものです。
サージカルマスクと布マスク
サージカルマスクと布マスクは?というと、N95マスクほど密着性もウイルスの捕集性も優れていませんので、残念ながらこれらのマスクをつけても自分の身を守るという意味では限定的な効果です。
しかし、新型コロナウイルスは発症2日前からすでに感染性をもっているので、サージカルマスクや布マスクをしていることで無症状の状態で周りに拡散させないという意味があるんです。
ですので、サージカルマスクや布マスクは
②「あなたの唾液、鼻水、痰が会話や咳によって他人に広がるのを防ぐ」マスク
と覚えておきましょう。
布マスクで良いの?
サージカルマスクと布マスクのどっちが良いのでしょうか?
構造的にはサージカルマスクのほうがフィルター機能に優れています。
しかし、以下の表のようにWHOが推奨する「一般の方が布マスクを使用する状況」では、
- 60歳以上
- 持病のある
- COVID-19に感染している可能性のある
方以外となっており、リスクのある人以外は布マスクでOKという見解です。
布マスクを使用するメリットとしては
- 再利用できる
- コストと廃棄物が削減される
- 持続可能性に貢献
がありますので、基本的には上記に該当する人以外は布マスクを使うべきでしょう。
サージカルマスクは医療従事者に必要なマスクですので、布マスクを有効に使うというスタンスは賛成です。
ちなみにどんなマスクが良いか、私が選んだおすすめマスクはこちら。
【関連記事】新型コロナ マスクに適した生地で作ったおすすめマスク
大事なのは手指消毒
いくらマスクに感染予防効果があると言っても、あちこち触った手で目・口・鼻の粘膜に触れては意味がありません。
鼻出しマスク、あごマスク、マスク表面を触る、ポケットへ入れるなどの行為は手指や顔を汚染しやすいので粘膜への曝露を増やすことになりますので注意が必要です。
食事の前、帰宅後、公共の物品を触ったあとは手指は汚染されているものと考え、手指消毒もしくは石鹸での手洗いを必ず行いましょう。
マスクの正しいつけ方はこちらの動画をどうぞ。
まとめ
以上、マスクの効果についてまとめました。
マスクをする目的は2つありますが、普段の生活レベルでは相手に感染させない目的で使用します。
そのマスクは布マスクでOKで、効果も実証されています。
何度も言いますが、マスクだけではダメです。
手指消毒を行ったうえで適切にマスクをしていれば濃厚接触には当たりませんので、自分と大切な家族の命を守るために正しい知識を知っておきましょう。
今冬はインフルエンザウイルスのWパンチも懸念されますので、インフルエンザワクチン接種も忘れずに~。
【インフルエンザワクチン】いつから打つべき?10月は早いのか。
コメント