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モルヌピラビルの特徴は?薬剤師からみた注意すべき点

モルヌピラビル注意点感染症
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米国Merck社が製造したモルヌピラビルがコロナ治療薬で世界初となる経口薬として登場しました。

  • モルヌピラビルについて現時点で分かっていること
  • 薬剤師からみた注意点

について解説します。

【この記事を書いた人】

管理人
管理人

病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。

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モルヌピラビルとは?

Mechanism of molnupiravir-induced SARS-CoV-2 mutagenesis (PMID: 34381216

モルヌピラビル(Molnupiravir)(治験番号:MK-4482/EIDD-2801)はSARS-CoV-2の複製を阻害するリボヌクレオシド誘導体です。

どのようにウイルスに作用するのかというと・・

ウイルスはヒトの細胞内に侵入したあとに、細胞内の材料を使って増殖していきます。

モルヌピラビルは細胞内の材料に非常によく似た構造をしているので、ウイルスの増殖を邪魔することができるという原理です。

ウイルスの増殖を邪魔するという意味ではインフルエンザウイルスに対するタミフル®が有名ですが、モルヌピラビルはタミフル®とはまったく違う作用です。

ちなみにモルヌピラビルによく似た薬が日本で開発されていことをご存知でしょうか?

それはアビガン®(ファビピラビル)です。

アビガン®はもともとインフルエンザ用の薬として開発されましたが、残念な結果だったため新型インフルエンザ用の備蓄薬として保管されていました。

アビガン®はSARS-CoV-2に効くのでは?と期待されたわけですが、有効かどうか本当のところはまだ分かっていません。

【関連記事】アビガンの効果が期待されているのは「作用の仕組みが新しい」から

【関連記事】【コロナ治療薬の光と影】消えていった薬、話題の新薬

管理人
管理人

モルヌピラビルが市場に出てくればアビガン®の存在価値はほぼなくなってしまうでしょうね・・。

モルヌピラビルの効果は?

モルヌピラビルの効果はいかほどなのでしょうか?

こちらはMerck社のプレスリリース

Merck社 プレスリリース より

モルヌピラビルの臨床試験はランダム化プラセボ対照二重盲検試験という最も信頼性の高い方法で行われています。(MOVe-OUT試験)

対象は軽度~中等症の入院を必要としないCOVID-19患者で、偽薬(プラセボ)またはモルヌピラビル(おそらく1日2回 5日間)服用したグループを比較しています。

主要評価項目はCOVID-19による入院または死亡です。

Merck社によると中間解析の結果、モルヌピラビルは29日目までの入院または死亡のリスクを50%低下させたと発表しています。

すなわち

プラセボ群 14.1%(53/377人)
モルヌピラビル群 7.3%(28/385人)
(p<0.0012)

なおかつプラセボ群では死亡が8人だったのに対し、モルヌピラビル群では死亡は0人だったとのことです。

またモルヌピラビルは変異株(ガンマ、デルタ、ミュー)に対しても一貫した有効性を示した、とも記載されています。

死亡リスク50%減はなかなかインパクトのある数字ですが、これはあくまでこの時のプラセボ群との比較であることに注意しましょう。

例えばワクチンの普及等の効果で、そもそもの市中感染のリスクが低下している条件ではこの差は縮まるわけなので、ここまでのインパクトが得られない可能性はあると思います。

管理人
管理人

効果を過大に評価しすぎないようにしましょう

とはいえ少なくともイベルメクチンよりはずっと信頼できる結果であることには間違いないです。

モルヌピラビルの副作用は?

モルヌピラビルの具体的な副作用についてはまだ詳細が分かりませんが、おおむね問題ない範疇だったと思われます。

Merck社によると、有害事象の発生率は

モルヌピラビル群35% vsプラセボ群40%

薬物関連の有害事象の発生率は

モルヌピラビル群12% vsプラセボ群11%

有害事象のために治療中断した患者の割合は

モルヌピラビル群1.3% vsプラセボ群3.4%

懸念材料は構造式が似ているアビガン®で催奇形性が確認されていることです。

モルヌピラビルに関しても催奇形性があるのでは?という懸念があるのですが、第Ⅲ相試験まで到達しているということはクリアできているということなのでしょう。

モルヌピラビルの位置づけと注意点

  • 世界初のSARS-CoV-2に対する経口薬
  • 軽症~中等症の外来患者の入院、死亡リスク低減

ということで入院治療が必要な患者さんを減らせるという意味で画期的な薬だと思います。

抗体療法(ロナプリーブ®、ゼビュディ®)と比べても医療従事者の負担も少なく簡便ですし、安価というのもメリットなので、リスクのある患者さんには外来で処方されていくでしょう。

注意すべき点は安易な使用によるウイルスの耐性化です。

ウイルスはその性質上必ず変異を獲得します。

そのためにはモルヌピラビルは必要な人に、適切なタイミングで使用すべきです。

2018年に抗インフルエンザ薬の新たな選択肢として発売されたゾフルーザ®の乱用によって、インフルエンザウイルスが耐性化したというニュースは記憶に新しいところです。

モルヌピラビル発売後すぐにSARS-CoV-2が耐性を獲得(新たな変異株が登場)し、使えなくなってしまうという事態は避けたいものです。

まとめ

モルヌピラビルについて現時点で分かっていることについてアビガン®も交えて解説しました。

モルヌピラビルに関してはSARS-CoV-2に曝露された後に予防的に投与したらどうなるか?という臨床試験(MOVe-AHEAD試験)も行われていますので使われる頻度が高まるかもしれません。

また経口治療薬はモルヌピラビル以外にも塩野義製薬、ファイザーなど他のメーカーも開発を進めている段階です。

新薬が登場する一方でウイルスの耐性化も大事な視点だと思います。

薬剤師の立場でこれらが適切に使用されるように見守っていきたいと思います。

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