このページのポイントは以下のとおりです。
・濃度を表す「%」にはいろいろ種類(単位)があることにご注意
・エタノールが最も効果を発揮するのは80vol%
・ドラッグストアでエタノールを購入するときも単位はチェック
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療や薬についての正しい知識を提供するように心がけています。
※この記事は、家庭で高濃度エタノール(95.1~96.9vol%またはそれ以上)を希釈して使用することを推奨しているものではありません。あくまでも医療機関での対応を想定しています。
エタノールは引火性が強い物質ですので取り扱いには十分注意をお願いします。
消毒薬が足りない・・
2020年3月ごろから新型コロナウイルス流行の影響で世界的に消毒薬が不足。
一時期、近所のドラッグストアでもほとんどみかけなくなりました。
取引先の卸さんからも「厳しいですね・・」と言われ、なかなか入手できない状況が続きました。
消毒用エタノールは消毒薬の中でもピカイチの使いやすさと消毒効果をあわせもった薬です。
さてどうしようかと全国の医療機関が困ったはずです。
そんな中、厚生労働省から以下のような通知が来ました。
医療機関等の施設内であれば
通常消毒薬としては使用しない高濃度のエタノールを希釈して使用することを認める
ということです。
(※高濃度アルコールは95.1~96.9vol%またはそれ以上のもの)
さらに、医薬品として認められていない工業用エタノールも限定的に使用が認められる、ということになりました。
サントリーHDや宝酒造、医療機関などに消毒液を提供へ
朝日デジタル 2020年4月15日 https://www.asahi.com/articles/ASN4H6GK3N4HPLFA005.html
サントリー、資生堂、宝酒造などの大手企業、その他各地の酒造会社さんからも高濃度エタノールを提供して頂けたことは何とも有難かったですね。
エタノールの有効濃度は?
さてそんなエタノールの有効な濃度はどれくらいなのでしょうか?
数ある消毒薬の中でもエタノールは細菌やウイルスを幅広くカバーし、短時間で殺菌できます。
エタノールは揮発するときに殺菌効果を発揮するんです!
日本薬局方で規定されている濃度は76.9~81.4vol%となっています。
新型コロナウイルスには60vol%でも有効という報告がありますが、基本的には80vol%が望ましいです。逆に60vol%以下に希釈しすぎると黄色ブドウ球菌などの細菌に効果が期待できないという報告があります。
要は濃すぎても薄すぎてもダメということ。
高濃度エタノールを希釈するには? vol%って?
さて、さきほどから見慣れない単位がでてきていますね。vol%について解説します。
実はvol%には4つの単位があります。
1. 重量パーセント(w/w%) 水もエタノールも重さgで計算
2. 容量パーセント(v/v%) 水もエタノールも容量mLで計算
3. 重量/容量パーセント(w/v%) エタノールを重さgで、水を容量mLで計算
4. 容量/重量パーセント(v/w%) エタノールを容量mLで、水を重量gで計算
ややこしいですが、vol%とは容量パーセント(v/v%)のことを表しています。
つまり、高濃度エタノールを希釈するときは水もエタノールもmLで測れば良いということになります。
医療機関ではこれに基づいて高濃度エタノールを適切に希釈する必要があります。
(※あくまでも医療機関で実施することを想定した方法)
希釈の方法は以下のとおりです。
他のアルコール(イソプロパノール)の場合
高濃度エタノールが手に入らない場合、代替薬としてイソプロパノールがあります。
適正濃度は70vol%です。
こちらもエタノールと同等の効果がありますが、手が荒れる、臭いが強い、吸い込んだときに頭痛・嘔気を起こすなどの毒性がありますので取り扱いには十分注意が必要です。
99vol%の高濃度イソプロパノールを希釈する場合は、以下のようにします。
(※あくまでも医療関連機関で実施することを想定した方法です)
高濃度イソプロパノール(99vol%)濃度 707mL
精製水 適量
(全量で1000mLとなるように希釈)
ドラッグストア等でエタノールを購入するときの注意
市販のエタノール製剤は医薬品・医薬部外品のどちらにも含まれない「雑品」扱いなので、濃度の規定がありません。10~80vol%とさまざまなものがあるようです。
中にはきちんとした効果が保証されていない商品もあるかもしれません。
確実な消毒効果を期待して購入するのであれば、ラベルに濃度の記載があるかどうか、vol%やv/v%表示なら60~80%(もしくは重量/容量パーセントなら48~64w/v%)の表示があれば信頼できるでしょう。
こちらの商品はv/v%で75%と表示があります。
基本は手洗い
エタノールを手指消毒に用いるのは「あくまでも医療現場や外出時」で、手が洗えない場合に限られます。
日常的に流水・石鹸が使用できる状況ではエタノール含む消毒薬は必要ありません。
(話題の?)次亜塩素酸水に関してもあえて使う根拠はありません。
【関連記事】「次亜塩素酸水」はどのように使えば良いのか?
まとめ
・濃度を表す「%」にはいろいろ種類(単位)があることにご注意
・エタノールが最も効果を発揮するのは80vol%
・ドラッグストアでエタノールを購入するときも単位はチェック
限られたエタノール製剤は貴重な資源でした。再び同じような状況にならないことを望みます。
※この記事は家庭での高濃度エタノールの使用を推奨しているものではありません。
あくまでも医療機関での対応を想定しています。
エタノールは引火性が強い物質ですので取り扱いには十分注意をお願いします。
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