便器の中を見たら薬が残ってたんです。これって薬の効果がないってことじゃないですか?大丈夫なんでしょうか‥?
えーっと…ちょっとお待ちくださいね。(そんなことあるのかな?)
先日初めて入院患者さんからこんな相談を受けました。
直感的にゴーストピルが頭に浮かんだものの、今飲んでる薬でそんなのないしな~と正直半信半疑・・。
よくよく見てみたら、ちょうど昨日まで塩化カリウム徐放錠を飲んでいたことが判明。
ゴーストピルについてもうちょっと詳しく知っていたら、事前に患者さんにきちんと説明できたのになぁ、と反省した事例でした。
今回はゴーストピルについてまとめます。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
ゴーストピルとは?
ゴーストピルは別名ゴーストタブレットとも呼ばれています。
徐放性製剤が消化管内で主薬を放出した後、錠剤の殻がそのままの状態で糞便中に排泄されることを指します。
このことを知らない患者さんにとっては、あたかも飲んだ薬がそのまま体外に排泄されているように見えるので、薬が吸収されていないのではないか?効いていないのではないか?と不安になってしまいます。
実際、どんな感じで排泄されているのでしょうか・・?
以下の論文に画像付きで報告されていました。
Ghost tablet in feces (PMID 29264103)
塩化カリウム徐放錠のゴーストピルですね‥。
確かにこの状態で便から出てきたのを見たらびっくりしそうです。
ゴーストピルになりやすい薬剤は?
ゴーストピルは基本的に徐放性の性質を持つ製剤で発見されやすいと思われます。
試しにPMDAの医薬品検索サイトで、「組成と性状」の項目に徐放と記載され、かつカプセルを除いた医薬品を検索してみると60件ヒット。
主な薬剤を挙げると
- 塩化カリウム徐放錠600mg「St」
- フェロ・グラデュメット錠105mg
- インチュニブ錠1mg/インチュニブ錠3mg
- フランドル錠20mg
- ジルチアゼム塩酸塩錠30mg/ジルチアゼム塩酸塩錠60mg
- テオドール錠100mg/テオドール錠200mg
- ニフェジピンL錠10mg/ニフェジピンL錠20mg
- デパケンR錠100mg/デパケンR錠200mg
- インヴェガ錠3mg/インヴェガ錠6mg/インヴェガ錠9mg
- ナルサス錠2mg/ナルサス錠6mg/ナルサス錠12mg/ナルサス錠24mg
- トビエース錠4mg/トビエース錠8mg
- メサラジン徐放錠250mg/メサラジン徐放錠500mg
- コンサータ錠18mg/コンサータ錠27mg/コンサータ錠36mg
たくさんありますね。
さらに、これでヒットしなかった薬剤でも「マトリックス基剤」「白色の残渣」
- ジソピラミドリン酸塩徐放錠150mg
- プロタノールS錠15mg
- デパケンR錠100mg/デパケンR錠200mg
がヒットしてきます。
なお、オキシコドン徐放錠のゴーストピルでの報告が過去に複数報告されているのですが、添付文書にそれらしき記載は見当たりませんでした。昔は注意喚起の一文が記載されていたようなのですが‥。
オキシコンチン錠からオキシコドン徐放錠NX錠、オキシコンチンTR錠に変わったことでゴーストピルがなくなるような工夫がされたのか‥は未確認です。
ゴーストピルに遭遇しやすい患者さん
ゴーストピルは排泄物を直接目で確認する習慣がある患者さんで遭遇率が高いです。
簡易トイレを使用している方、人工肛門がある方の場合はより具体的な指導が必要になると思います。
こういった患者さんには特に
もしかすると飲んだお薬がそのままの形で出てくるのを見かけることがあるかもしれませんが、ちゃんとお薬は吸収されていますから心配しないでくださいね~
という一言を添えてあげるようにしたいものです。
まとめ
この記事を書いてから、実際に患者さんに伺ってみると早速「何かな?と思ってました」「あったよ」という反応がありました。
こちら側から意識的に情報を集めることの重要さを学びました。
何気ない会話の中に服薬指導のヒントがあるものですね。
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