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経腸栄養剤を投与するときはナトリウムに注意!

栄養
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最近、経腸栄養剤を使っている人が何人か低ナトリウム血症になっていることに気がつきました。

私は知らなかったのですが、調べてみるとこれって結構有名な話のようで、漫然と経腸栄養剤を使っている人は低ナトリウム血症になりやすいそうです。

備忘録も兼ねて、今回は「経腸栄養剤とナトリウム」をテーマにします。

【この記事を書いた人】

管理人
管理人

病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。

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経腸栄養剤に含まれる食塩は?

医薬品としてよく使用される経腸栄養剤に含まれる食塩の含有量を調べてみると、以下のとおりになりました。

薬品名容量食塩含有量
ツインラインNF400ml0.70g
ラコールNF400ml0.75g
エレンタール80g0.66g
エンシュアH250ml0.76g
エネーボ250ml0.59g
イノラス300ml0.69g
各薬剤の添付文書、メーカーのHPを参照

1日に必要な食塩の量は5-6g 1) という報告があるのですが、仮にツインラインNFを1600ml投与するとわずか2.8g‥と全然足りません

たしかにこれでは低ナトリウム血症になっても仕方ないですね。

重症患者の経腸栄養管理を扱った報告では、70例中51例に食塩の補充が必要であった2)としているものもありました。

今まで経腸栄養剤を軽視していたことを反省しています・・

食塩は経腸栄養剤に混ぜてはいけない

それならば、足りない分の食塩を補えばよいはず。

なのですが、そう簡単な話ではなかったです(-_-;)

実は、経腸栄養剤に直接塩化ナトリウムを混ぜると「塩析」という現象が起きて、投与中のチューブが閉塞してしまう可能性があります。

経験ありませんか?

豆乳に「にがり」を入れると固まって豆腐になる、みたいなイメージで、沈殿物ができるんですね。

経腸栄養剤1Pあたり食塩1g程度なら問題なく投与できることが多いようですが、それ以上はチューブが詰まる可能性がありますので、別々に注入したほうが良いでしょう。

施設によっては、「経腸栄養剤と食塩は混ぜない」とルールを決めているところもあるようですが、まだまだ浸透していない医療機関や施設も多いと思いますので、転院時の情報提供もしっかりしておきたいポイントです。

食塩の濃度に注意して投与しよう

別々に投与しようとする時にも注意が必要です。

それは食塩の濃度です。

理由は、食塩の濃度が濃い状態で直接注入してしまうと思わぬ事故が起きる可能性があるため。

例えば、食塩4gを20mlの水に溶いて胃瘻から注入後に胃出血を発症した事例3)や食塩1gを20mlの水に希釈して空腸に注入したことで限局性小腸炎が発症した事例4)が報告されています。

高濃度の食塩によって、消化管の粘膜細胞が高浸透圧になり、細胞内脱水になったことが原因と考えられているようです。

食塩を注入する際は、等張になるようにする(1gの食塩に対して100ml程度の水で溶かす)必要があることを知っておきましょう。

投与後はナトリウム値のモニタリング

食塩の補充を開始したら、その後の検査でナトリウム値が正常化していくかモニタリングしましょう。

食塩を投与する状況はあくまでも一時的なもの。

水分のバランスを見ながら、今度は逆に塩分負荷がかかりすぎていないかをチェックすることも忘れずに。

薬剤師としてできることはいろいろありますね。

以上、気をつけたい経腸栄養剤とナトリウムの関係でした。

【参考文献】

1)渡辺ら 井原市民病院医学紀要. 3:45-49,2000

2)後藤ら 静脈経腸栄養. 19:55-58,2004

3)飯島ら Nutrition Care. 8(10):1040-5,2015

4)森川ら 日臨外会誌. 68(7):1723-6,2007

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