今回は、ロケルマ懸濁用散についてです。
高カリウム血症改善剤と言えば、
カリメート、アーガメイトゼリー、ケイキサレートがありますね。
何が違うんでしょう?
従来の薬よりもカリウムの選択性を高めているのが売りみたいですよ。
それでは審査報告書を確認していきましょう。
ロケルマの特徴
ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム:ZS)は体内に吸収されない均 一な微細孔構造を有する非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、上の図のような構造です。
結晶格子内のNa+やH+が、外部溶媒中のNH4+やK+と交換されます。
ロケルマがK+に対し高い選択性を示すのは、微孔開口径が約3Åであること、規則正しい結晶構造であることに由来しているそうです。
構造が美しいですね。
カリウムが取り込まれた状態が一番安定、ということなのでしょうか。
ロケルマは1価のカチオン(カリウム、アンモニウム)に親和性が高く、2価のカチオン(カルシウム、マグネシウム)にはそれほど影響しないと言われています。
また、胃のような低いpHより、小腸及び大腸のpH4.5~6.8のほうがK+を交換することが示唆されていますので、ロケルマの効果は腸管内で発揮されると考えられています。
さらに言うと、どうやらロケルマは単にカリウムを吸着するだけではない既存の薬と一線を画したユニークな薬、というのも分かってきています。
【関連記事】
新規高カリウム血症治療薬ロケルマの意外!?な効果
ロケルマの有効性
続いて有効性について確認します。
国内第II/III相試験(D9482C00002試験)
最初は初回ローディングについての試験です。
対象:高カリウム血症の患者(連続2回測定した血中カリウム値が、2回とも5.1 mmol/L以上6.5 mmol/L以下)
デザイン:多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
主要評価項目:投与48時間後までの血清カリウム値のexponential rate of change(単位時間あたりの血清カリウム値の変化を示す指標)
用法用量は、プラセボまたはロケルマを5gまたは10g 1日3回、48時間、計6回経口投与です。
結果です。
プラセボ群と比較してロケルマ5g 1日3回群、ロケルマ10g 1日3回群で統計学的な有意差が認められました。
48時間で約1mmol/L前後、カリウムが低下しています。
国際共同第III相試験(D9480C00002試験)
次は維持期の試験です。日本、ロシア、台湾、韓国で行われました。
対象:高カリウム血症患者(血中カリウム値が2回とも5.1 mmol/L以上)
デザイン:多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
主要評価項目:維持期投与8~29日目の血清カリウム値
用法用量は、補正期終了当日の午前中までに正常カリウム値(3.5mmol/L以上5.0mmol/L以下)に達した場合に、維持期に移行し、プラセボまたはロケルマを5gまたは10gを1日1回朝に28日間経口投与となっています。
結果です。
プラセボ群と比較して本薬5g 1日1回投与群及び本薬10g 1日1回投与群で統計学的な有意差が認められました。
日本人でも同じ傾向を認めていますね。
血液透析患者を対象とした国際共同第III相試験(D9480C00006試験)
血液透析(HD)患者対象の試験です。
日本、ロシア、英国、米国で行われています。
対象:HD患者
デザイン:多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
デザイン:最大透析間隔後の血清カリウム値の奏効割合(評価期間中の最大透析間隔後(週3回のHDで前回透析より3日目)の血清カリウム値(透析前値)が4回中少なくとも3回4.0 mmol/L 以上5.0 mmol/L 以下で、その間レスキュー治療を受けなかった患者(奏効例)の割合
結果です。
プラセボ群と比較して、ロケルマ群で統計学的な有意差が認められました。
症例数は少ないですが、日本人でも同様の結果です。
海外第III相試験(ZS-004)
最後にこちら。
対象:高カリウム血症患者
デザイン:多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
主要評価項目:維持期投与8~29日目の血清カリウム値
維持期の用法用量は、プラセボまたはロケルマ5g、10g、15gを1日1回朝、28日間投与です。最大量が15gとなっています。
結果です。
プラセボ群と比較して、ロケルマ5g、10g、15g1日1回群いずれにおいても統計学的な有意差が認められました。
ローディング、維持期、透析患者での有効性が確認できました。
それぞれ用法用量が違うので確認が必要ですね。
安全性
RMPを確認します。
低カリウム血症については、定期的にモニタリングをすれば重症度はほとんど軽度であろうと判断されています。
浮腫関連事象が比較的高頻度で認められています。
国内長期試験では、うっ血性心不全を発症した2例のうち、1例は投与中止に至っています。
ロケルマ自体は体内に吸収されないはずですが、ロケルマに含まれるナトリウムイオン(本薬1 gあたりナトリウム80 mg 含有)が体内に吸収され、浮腫関連事象を引き起こす可能性が指摘されています。
また、便秘も比較的高頻度かつ用量依存的に発現割合が上昇していることから注意が必要と記載がありました。
このあたりはカリメートやアーガメイトでも同様ですね。
臨床的位置づけ
ロケルマは、高カリウム血症に対する治療選択肢の一つとなるとしたうえで、
緊急性のある高カリウム血症に対する治療としては適していないことについて注意喚起する、としています。
また、ロケルマは胃内で水素イオンを吸着するため、胃内pHを上昇させる可能性があります。
従って、アゾール系抗真菌薬、抗HIV薬、チロシンキナーゼ阻害薬については、これらの薬剤の効果を減弱する可能性があるため併用注意です。
まとめ
新規高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散」についてまとめました。
カリウム選択性が高い、相互作用が少ない(吸着の問題、金属カチオンによる効果減弱がない)ことは従来の薬に比べたメリットになりそうです。
ローディングと維持期、透析患者で用法用量が異なるので使い方の確認が必要ですね。
【関連記事】
薬剤師に必要なスキル~新薬を評価する方法~
薬剤師の求人ならエムスリーキャリア
コメント