トレーシングレポート最近めっちゃ送られてきて、目を通すの大変‥
でも正直内容が微妙なときあるよね。
保険薬局から届くトレーシングレポート(服薬情報提供書)が最近増えてます。
トレーシングレポートは薬薬連携を進めるうえで、非常に重要でありがたいものなのですが、私の病院では病院薬剤師は送られてくるレポートをすべて目を通して、カルテに記載しないといけないのでなかなか大変です。
聞くところによると、このトレーシングレポートが件数稼ぎの手段になっていることがあるようです‥
トレーシングレポートが増えた背景や現場の実情を踏まえて、最近思っている雑感を書いてみたいと思います。
トレーシングレポートとは
トレーシングレポートは、保険薬局の薬剤師が患者面談で得た情報を医師へフィードバックするための情報提供ツールです。
残薬の状況について聞き取った内容や、服薬指導時あるいは服用後の体調変化についてフォローアップした内容を記載します。
一般的には「疑義照会するほどの緊急性はないが、医師に伝えておくのが有益と薬剤師が判断」した内容と定義されています。
トレーシングレポートを書くことによる保険薬局のメリットの一つが、地域連携薬局の認定取得に求められる月30件の要件を満たすことができることです。
そのためトレーシングレポートを活用した医療機関への情報提供に積極的に取り組む保険薬局が増えています。
トレーシングレポートの弊害
一方でトレーシングレポートの質に関する議論があります。
認定薬局取得のためにノルマが課せられているため、内容の薄いレポートが報告されているというのです。
中には、単なる服薬指導の内容を報告するだけのレポートもあるとか。
さすがにそこまでではありませんが、私の施設では以下のパターンが多いです。
「新規に降圧剤〇〇が開始されましたので、電話でフォローアップを行いました。血圧は問題ありませんでした。」(開始1週間後くらいを目安に報告)
降圧剤の血中濃度が安定しているであろう時期に報告されているし、アドヒアランスや副作用発現も確認してくれています。
重要な情報であることは間違いないですし、算定上も問題ないでしょう。
しかし、このパターンでバンバン報告されると、医師はカルテに記載されていてもおそらく読みません。
あ~またか、のパターンになっちゃうからです。
トレーシングレポート1件報告するのに、保険薬局薬剤師も病院薬剤師もいろいろ苦労した挙句、実は医師に読まれていなかったとすると、何のための苦労なのか‥。
本当に読んでもらいたい内容のレポートが埋もれてしまうのは残念です。
ノルマ目的のトレーシングレポートにしないために
正直、トレーシングレポートの質に関する加算上の明確な基準がないので、何が正解か分かりませんが、ノルマ目的のトレーシングレポートにしないためにはどうすればいいのでしょうか?
問題がなかったという内容は報告意義が少ない
「新規に降圧剤〇〇が開始されましたので、電話でフォローアップを行いました。血圧は問題ありませんでした。」
おそらく医師は、血圧に問題がなかったという薬剤師の報告に関心はないです。
このレポートに意味がないとは言いませんが、医師が知り得ない情報が含まれていなければほとんどスルーされてしまうと思います。
関心があるとすれば
- きちんと飲めていないことで降圧が得られていない
- 薬が効きすぎて血圧が低く、ふらつきを訴えている
など、何らかの問題が生じている場合でしょう。
まずはハイリスク薬や手技が重要な薬を対象に
とはいえ、問題が生じる場合というのはそうそうあるわけではありません。(むしろあると困る‥)
「医師は問題がないことに関心がない」と書きましたが、抗がん剤などハイリスク薬の場合は別だと思います。
副作用が出ているのか、副作用があるなら受診勧奨が必要なレベルなのかといった内容は報告の意義があるでしょう。
またデバイスを使ったもの(インスリンや喘息吸入薬)が適切に使用できているかといった内容も喜ばれると思います。
まずはこのような薬を対象に報告してみてはどうでしょうか。
検査値関連の報告
検査値関連の報告も有用です。
例えば
活性型ビタミンD製剤を服用していて、定期的にカルシウム値のモニタリングが必要なのに採血項目にカルシウム値がなかったので、次回採血を依頼した
腎機能的に減量基準に引っかからないが、服用している糖尿病薬のリスクが懸念されるので、代替案を提案した
などのように検査値を利用したトレーシングレポートも価値があるでしょう。
まとめ
ノルマ化されたトレーシングレポート自体が悪いわけではありませんが、質が低いものが量産されてしまうと、結局は医師に読まれないことになってしまいますし、薬剤師の存在意義にも関わってきます。
トレーシングレポートの質に関しての議論が十分でない状況ですが、今後は病院薬剤師と保険薬局薬剤師が協力して、質に関する議論をしていかないといけないのではないでしょうか。
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