コロナワクチンでにわかに筋注が注目を浴びています。
それもそのはず。日本ではワクチンといえば皮下注が一般的でしたからね(^^;
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さて、コロナワクチンを接種するにあたって筋注のやり方に自信がない方も多いのではないかと思います。
今回は正しい手技を身に付けられるオススメ動画をご紹介します。
(2021年3月15日の日本プライマリケア学会の動画改訂を踏まえ、記事更新しました)
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
オススメ筋注動画①~日本プライマリケア・連合学会~
日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修のもと作成されたのがこちらの動画。
2021年2月22日に公開されたものが、奈良県立医科大学・臨床研修センターの仲西康顕先生の指導をもとに2021年3月15日に改訂版として公開されています。(約14分間)
『2021/3/15公開『新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 2021年3月版』日本プライマリ・ケア連合学会ワクチンチーム 製作・監修』
ポイントを解説します。
変更になった最も大きな点は接種部位です。
これまでは上腕三角筋の肩峰から2~3横指下が目標とされていましたが、今回は肩峰からおろした垂線と前腋窩線と後腋窩線の頂点を結んだ線が交わる点となりました。
接種する際は三角筋の両縁に指を添えます。
つまみ上げてはいけません!(浅くなってしまい皮下注になる可能性があります)
皮膚に対して垂直に、根元まで針を入れます。
従来の部位と比べると位置が少しずれていることが分かりますね。
部位が変更になった理由としては、SIRVA(Shoulder Injured Related to Vaccine Administration:ワクチン接種に関連した肩関節障害)、腋窩神経障害、橈骨神経障害が起こる可能性があるためです。
目線も接種者と被接種者が同じ高さである必要があるとのことです。
とはいえ、この新しい接種方法で確実に合併症が減るというエビデンスもはっきりしていないため、学会ではいずれの選択肢も残すということです。
詳しくは動画をご覧ください。
針の長さは基本的に25mm。
日本人の体格でも25mmの針でおおむね問題ないと考えられていますが、痩せ型の人ではゆっくり針を進め、骨に当たった場合は少し針を引き戻して打つ、もしくは16mmを使用することとしています。
逆に肥満の方の場合の針の長さの目安も解説されています。
最後に逆血確認は不要です。
理由は、三角筋中心部は毛細血管しかないので太い血管に当たることはないからです。
また、逆血を確認するためにシリンジを引くと陰圧になってしまい、筋肉を破壊してしまうおそれがあるからです。
接種部位を揉んでもいけません。(特にmRNAワクチンでは大切なワクチンの成分が壊れてしまう可能性がありますから)
今回の筋注手技の話題を契機に、今後は生ワクチン以外は海外と足並みを揃えてインフルエンザワクチン含めて筋注になっていくかもしれませんね。
オススメ筋注動画②~Intramuscular and subcutaneous injections: A guide for pharmacists~
カナダの薬剤師向けに手技を紹介した動画です。(約9分間)
Intramuscular and subcutaneous injections: A guide for pharmacists
カナダでは薬剤師でもワクチン接種が可能なんですね(^^
4分48秒~7分くらいまでを紹介します。
筋注では患者の体格に合わせて22~25ゲージの針を選択するように推奨しています。
こちらの動画では上腕三角筋の中、肩峰から2~3横指下を目標にするとしています。
針を90度の角度で根元まで挿入します。
素早い方が痛みが少ないようですね。
こちらも逆血確認は必要ないと言っています。
番外編 COVID-19ワクチン筋注手技の注意(日本感染症学会)
番外編として、動画ではありませんが「日本感染症学会のCOVID-19 ワクチンに関する提言」の中で筋注手技についての解説を紹介します。
詳細は原文を読んで頂きたいですが、ポイントは
- 針の太さは22~25ゲージ、長さは25mm(痩せた人は16mm、肥満の方は32~38mmも可)
mRNAワクチンは筋肉細胞内でタンパク質に翻訳されるため、しっかりと筋肉内に到達させる必要があるためです。
痩せすぎの人に長い針を使うと骨膜損傷や三角筋下滑液嚢炎を起こすおそれがあることに注意します。
COVID-19 ワクチンの臨床試験はすべて三角筋外側中央部に接種されているので、他の部位(臀部、大腿部等)への接種はNGです。
- 逆血は確認しない
繰り返しなので割愛します。
- 接種する腕は効き手ではないほう
1回目と2回目の接種も同じ側の腕が望ましいです。(臨床試験に倣って)
もし1 回目の接種部位に著明な局所反応を認めた場合、2 回目は反対側に接種することは可能のようです。
- 注射部位は揉まない
mRNAワクチンは振動などの刺激に対する安定性が十分保証されていないので、揉むことで分解されることを避ける必要があります。
まとめ
筋注手技の動画を紹介しました。
ポイントは
- 接種部位は2パターンのうちどちらか
- 針の長さは25mm
- 針のサイズは22~25G
- 皮膚に90℃の角度で根元まで
- つまみ上げない
- 素早く
- 逆血確認は不要
- 接種後は揉まない
といったところでしょうか。
痩せ型、肥満の方の場合には針の長さを調整する必要があるので、あらかじめ準備しておいたほうが良いかもしれませんね。
筋注される予定の方はイメージをつかむために実際の動画をみてシミュレーションしておくことをお勧めします!
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