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審査報告書・RMPからみる「ユリス錠」(ドチヌラド)

審査報告書・RMPからみるユリス錠新薬関連
審査報告書・RMPからみるユリス錠(ドチヌラド)
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このページの要点は以下のとおりです。

・ユリスは既存の薬(ベンズブロマロン)の副作用を軽減する目的でつくられた

・有効性(尿酸低下作用)はベンズブロマロン、フェブキソスタットに劣らない

・現時点では安全性に問題はなさそうだが、劇症肝炎を起こす頻度自体は非常に稀なので長期間のモニタリングは必要

尿酸を下げる新しい薬が出たんですね。

管理人
管理人

そうですね。新しいというよりは既存のくすりの改良版みたいな感じです。

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ユリス(ドチヌラド)誕生のコンセプト

現在、日本での尿酸降下薬の主流は尿酸生成抑制薬のフェブキソスタット(およそ50%)やアロプリノール(およそ40%)で、尿酸排泄促進薬のベンズブロマロンは10%に満たないそうです。(2017年度のデータ)

この理由としてベンズブロマロンの肝障害が問題ではないか?ということで、より安全なくすりをコンセプトとして開発されたのがユリスです。

管理人
管理人

個人的にはこういうコンセプトには共感が持てます。

ベンズブロマロンの歴史

ベンズブロマロンはだいぶ古い薬で、発売は1979年です。
2000年2月にイエローレターが出ました。

https://www.pmda.go.jp/files/000148219.pdf

推定使用患者30万人のうち、因果関係が否定できない劇症肝炎の報告が8例(そのうち死亡例が6例)出たため、開始後6か月間の定期的な肝機能検査を行うこととされました。

さらに2011年11月にPMDAから再度注意喚起が出ています。

https://www.pmda.go.jp/files/000143908.pdf

肝機能検査が適切に行われないケースが多かったということなんですね。

 

それでは、ユリスについて審査報告書を確認していきます。

ユリスの特徴

持田製薬ホームページより

 

体内で生成された尿酸は、

①腎臓で糸球体ろ過
   ↓
②尿中の尿酸はURAT1(近位尿細管に発現するトランスポーター)を介して血中へ再吸収
   ↓
③血液中の尿酸はABCG2、OAT1 、OAT3(近位尿細管又は小腸に発現するトランスポーター)を介して尿または消化管中に分泌

という経路をたどりますが、

ユリスはベンズブロマロンやプロベネシドと比較してURAT1選択性が高いため、ABCG2、OAT1、OAT3 を介した尿酸分泌経路には影響せず、URAT1 を介した再吸収経路のみを阻害することで効率的に尿酸を排泄させます。

 

管理人
管理人

これを選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)と呼ぶようです。

有効性

 

国内第Ⅲ相ベンズブロマロン対照試験(011試験)です。

対象:血清尿酸値7.0mg/dL以上の痛風患者または高尿酸血症患者
デザイン:無作為化二重盲検並行群間比較試験
主要評価項目:ベースラインから投与終了時までの血清尿酸値低下率

 

結果です。


ユリス2mg群とベンズブロマロン群の群間差の 95%信頼区間の下限値が事前に設定し た非劣性マージンを上回ったことから、
ユリス2mg群のベンズブロマロン群に対する非劣性 が示されました。

 

 

次に、国内第Ⅲ相フェブキソスタット対照試験(014試験)です。

対象:血清尿酸値7.0mg/dL以上の痛風患者または高尿酸血症患者
デザイン:無作為化二重盲検並行群間比較試験
主要評価項目:ベースラインから投与終了時までの血清尿酸値低下率

 

結果です。

さきほどの試験同様、
ユリス2mg群とフェブキソスタット群の群間差の 95%信頼区間の下限値が事前に設定し た非劣性マージンを上回ったことから、
ユリス2mg群のフェブキソスタット群に対する非劣性 が示されました。

 

これらの試験の副次評価項目である
「投与終了時における血清尿酸値 6.0mg/dL以下の達成率」にも差は見られていません。

ちなみに、病態別(尿酸排泄低下型、混合型、正常型)の有効性や投与前の血清尿酸値別の有効性にも特に問題は見られないとして評価されています。

 

管理人
管理人

実際の現場でも、病態まで特定したうえで高尿酸血症を治療しているケースはあまりないように思います。

肝機能障害時の投与量

重度肝機能障害を有する患者では、それ以外の患者に比較して薬力学的作用が減弱する傾向が認められたものの、有効性が減弱しているとまでは言えないため、肝機能別の用量設定は必要とされていません。

 

ただし、重篤な肝疾患を有する患者やAST、ALT が100 IU/L以上の患者が除外されていたこと、類薬のベンズブロマロンでは重篤な肝障害の発現が懸念されたこと、を踏まえ添付文書で注意喚起は行う、となっています。

腎機能障害時の投与量

eGFR(mL/min/1.73 m2)別(正常:90 以上、軽度:60以上90 未満、中等度:60未満)の有効性の比較では明らかな差を認めていないことから、eGFR60(mL/min/1.73 m2)までは減量の必要はない、としています。

 

ただし、重度の腎機能障害(eGFR30(mL/min/1.73 m2)未満)については、臨床試験で除外されていること、そもそも糸球体ろ過量が低下している重度の腎機能障害がある場合は有効性そのものが期待できない可能性があるため、他剤を考慮する必要があります。

これはベンズブロマロンも同様です。(日本腎臓病薬物療法学会HPや成書を参考にしてください)

安全性

 

RMPです。

 

痛風関節炎は尿酸値の低下に伴って投与初期にみられやすい副作用ですが、他の尿酸降下薬に共通した副作用で、ユリスが特別頻度が高いということはなさそうです。

尿路結石については、臨床試験の多くの症例で尿アルカリ化剤が併用されていたこと、ユリスが尿中尿酸排泄量を増大させる薬であることから、尿酸結石等が発現する可能性は否定できないとしています。

そのため、添付文書で「水分摂取による尿量の増加及び尿のアルカリ化を図る旨を注意喚起する」ように、としています。

 

肝機能障害については、特別問題となる結果はありませんでしたが
そもそもベンズブロマロンで発生した劇症肝炎の発現頻度が低すぎるため、現時点では安全とは言い切れないとして、潜在的リスクになっています。

臨床的位置づけ

 

高尿酸血症患者の過半数は尿酸排泄低下型患者であるにも関わらず、尿酸生成抑制薬が使用されている実態を踏まえると、ベンズブロマロンに続く尿酸排泄促進薬の登場は治療選択肢の一つになる、と記載されています。

 

管理人
管理人

選択性が高いのが売りなわりに有効性は同等、ならば費用対効果はどうなの?
ベンズブロマロンと比較して本当に安全性が高いの?
といったところが気になります。

 

また薬剤師としては、そもそも無症候性の高尿酸血症に対する尿酸降下薬の使用自体が疑問視されていますので、ポリファーマシーの観点からも適正使用に重きをおいていきたいところです。

まとめ

ベンズブロマロンの歴史を振り返りつつ、ユリスの評価をしてみました。

肝機能異常・その他の副作用含め、ベンズブロマロンの二の舞にならないでほしいですね。

・ユリスは既存の薬(ベンズブロマロン)の副作用を軽減する目的でつくられた
・有効性(尿酸低下作用)はベンズブロマロン、フェブキソスタットに劣らない
・現時点では安全性に問題はなさそうだが、劇症肝炎を起こす頻度自体は非常に稀なので長期間のモニタリングは必要

 

管理人
管理人

新薬の評価を自分でしてみると、薬剤師のスキルアップになりますよ。

こちらの記事もどうぞ。
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