ベンゾジアゼピンと言えば睡眠薬の中で最も多く処方されているくすりですね。
私が薬剤師になりたての頃はベンゾジアゼピン系睡眠薬は依存性が少ないとか、耐性がつきにくいから安全とか書かれている参考書があって、それを鵜呑みにしていた時期もありました。
しかし現在はベンゾジアゼピン系睡眠薬は減らす動きになっており、実際に自分が飲んでいる薬を減らしたいとおっしゃる患者さんも増えています。
この記事は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を減らしたいと思っている方向けに
・なぜベンゾジアゼピン系睡眠薬は減らさなければならないのか
・どの病院に行けば薬を減らす相談ができるのか
についてまとめています。
【この記事を書いた人】
現役の病院薬剤師です。睡眠医学、高齢者の薬物療法に興味があります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬を減薬しなくてはいけない訳
ベンゾジアゼピン系薬剤のリスク
厚生労働省のホームページに掲載されているこちらの資料からポイントを説明します。
この資料によると、高齢者がベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用した場合
- 転倒リスク2.6倍、認知機能障害リスク4.8倍、日中の疲れリスク3.8倍
- 認知症患者への不眠治療効果があるか不明
- 大腿骨頸部骨折リスク1.6倍
であること、
- 海外では処方期間に制限がある(多くは2~4週間)
- 日本では名前の異なるベンゾジアゼピン系薬の重複処方が多い
ことが問題点として指摘されています。
この他にもベンゾジアゼピン系には
- 依存(やめられなくなる)
- 耐性(薬がだんだん効きにくくなる)
- 離脱症状(やめようとするとかえって不眠になるなど身体症状が出る)
- せん妄(一時的な意識変容)
- 健忘(記憶の喪失)
- 錯乱(興奮して暴れたり、けいれんを起こす)
といった副作用のほか、医療費抑制の観点からも何かしらの制限の必要という機運が高まったという背景があります。
本当に必要な人に処方されているのか?
これは過去記事でも書きましたが、眠れないからといって全員が睡眠薬が必要なわけではありません。
不眠にはさまざまな原因があって、それぞれの原因に対処しなくてはいけないはずですが、多忙な医療現場では眠れない訴えに対して安易に睡眠薬が処方されているという実態があります。
睡眠薬よりも優先すべきことは、例えば睡眠についての正しい知識を得る、きちんとした診断をつける、認知行動療法を試すといったことです。
詳しくは 睡眠医療プラットフォーム をご覧ください
認知行動療法についてはこちらの本もおススメです。
実際に不眠に悩んだ著者が専門医を受診して認知行動療法に出会い、不眠を克服するまでの体験が綴られています。
国も減薬を推進している
こちらも平成30年度診療報酬改定の際の厚生労働省の資料です。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬を1年以上同じ用法・用量で継続処方している場合は処方料・処方箋料が減点されることになりました。
もちろんベンゾジアゼピン系睡眠薬が必要な方もいますので、その場合は適切な研修を修了している、精神科医師の助言があるといった条件を満たす場合は減点の対象にはなりません。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の急な中断・減薬は危険
ここまでベンゾジアゼピン系睡眠薬の減薬の必要性について述べてきましたが、薬を飲むことを急にやめたり、勝手に減らしたりすることは危険です。
これは前述した離脱症状のおそれがあるためです。
離脱症状はベンゾジアゼピン系薬剤を長期にわたって服用している場合に、急に中止・減薬することによって
- 不眠
- 動悸
- 吐き気
- 不安感
などの症状が出てしまうことがあります。
どのくらいの期間や量の薬を飲み続けると、離脱症状を⽣じるのかは個⼈差がありますが、⻑い期間、多い量、いくつもの種類の併⽤は、離脱症状を⽣じやすくなります。
ですので睡眠薬を中⽌するときには時間をかけてゆっくりと中⽌することが推奨されます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減薬に取り組んでいる病院を探す
では実際にどこで適切な治療を受けられるのでしょうか?
睡眠医療に取り組んでいる病院はまだそう多くはありません。
基本的には睡眠専門の外来や心療内科、精神科をもっている病院やクリニックを探すことになります。
睡眠医療に取り組んでいる病院は睡眠医療プラットフォームから検索するのが便利です。
このホームページは国立精神・神経医療研究センターが全国の代表的な睡眠医療施設、大学、研究機関の専門家と共同して作成した睡眠健康度の診断サイトです。
睡眠に悩む一般の方向けに、webでご自身の睡眠習慣や悩んでいる症状に関する質問に回答すると簡易診断が可能なシステムになっています。
睡眠障害の疑いのある場合には、ID登録した後に詳細診断が可能なサイトが紹介されます。
この診断結果を医療機関に持参すれば大変薬に立つ資料になります。
お近くに医療機関がなく、不眠症に悩んでいる場合はまず簡易診断してみることをおススメします。
また総合診療科の医師や日本プライマリ・ケア連合学会の専門医・認定医・指導医であれば減薬の手助けをしてくれるかもしれませんし、ポリファーマシー外来を設置している病院もありますので相談に乗ってもらえるでしょう。
岡山大学病院 「睡眠薬の整理に関する専門外来(睡眠薬ポリファーマシー外来)」開設のお知らせ
栃木医療センター 内科
東京都健康長寿医療センター ポリファーマシー・在宅支援外来
佐久総合病院 ポリファーマシー外来
まとめ
ベンゾジアゼピン系睡眠薬を減薬したいと思った場合に相談できる医療施設の情報についてまとめました。
まずは睡眠に対する正しい知識をつけましょう。紹介した睡眠医療プラットフォームもぜひ参考に。
くれぐれも自己判断で中断・減薬はしないように気をつけてください。
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