毎年流行するインフルエンザ、あなたは毎年ワクチンを打ちますか?
今年は新型コロナウイルスの流行とインフルエンザの流行が重なり、かなり危機感を持たないといけないシーズンになりそうです。
- インフルエンザワクチンを打っても効果がない
- ワクチンを打ってもインフルエンザにかかってしまう時はかかるから無駄
と思っている方もいるようですが、インフルエンザワクチンは自分だけでなく社会全体を守るワクチンです。
このインフルエンザワクチンはどのように作られるのでしょうか?
この記事ではインフルエンザワクチンができるまでの過程について解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。そこそこベテラン。
インフルエンザワクチンについての正しい情報をお伝えします。
インフルエンザワクチンを毎年製造するわけ
そもそもインフルエンザワクチン以外のワクチンは毎年製造したりしないのですが、インフルエンザワクチンってなぜ毎年製造する必要があるんでしょうか?
理由はズバリ、インフルエンザウイルスが変異しやすく、毎年少しずつ形をかえていく特徴があるためです。
形をかえるとはどういうことか?
インフルエンザウイルスの表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種類の糖蛋白質があるのですが、例えばA型インフルエンザウイルスだとHAはH1からH16の16種類、NAはN1からN9までの9種類に分かれています。
今年の流行株は「H〇型N△型」っていいますよね?
HAとNAの組み合わせで100種類以上の型があるわけですから、毎年このうちどの型が流行するかを予測しながらワクチンを製造する必要があるんです。
インフルエンザワクチンができるまで
それではインフルエンザワクチンができるまでを見ていきたいと思います。
実際どのように作られているかというとおおまかにプロセスは以下のとおりです。
- 国立感染症研究所が流行しそうな株を選定する(2~3月)
- 厚生労働省が株を決定・通達を出す(4月)
- ワクチン製造業者がワクチン製造を開始する
- ワクチン供給量が決定され、医薬品卸を通じて各医療機関へ納品される(9月末~10月)
ワクチン株を選定する
インフルエンザワクチンの候補株は厚生労働省健康局が国立感染症研究所に依頼します。
株を選定するに当たって国立感染症研究所が参考にしているのは
- WHOが年2回発表する北半球および南半球に対する季節性インフルエンザワクチンの推奨株
- 前年の国内のインフルエンザ流行株
- 前年のワクチン接種後の抗体と流行株との反応性
- 製造効率
などです。
日本は2月頃に発表される北半球の次シーズンに対するワクチン株を参考にして、日本国内で使用するインフルエンザワクチンを決定します。
2020/21シーズンのインフルエンザワクチンの株は
A 型株
令和2年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について(令和2年4月24日通知)
A/広東-茂南/SWL 1536 /2019(CNIC-1909)(H1N1)
A/香港/2671/2019(NIB-121)(H3N2)
B 型株
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/ビクトリア/705/2018(BVR-11)(ビクトリア系統)
の4つの株に決定されました。(2020年4月24日通達)
4価ワクチンと呼ばれるのはこのためですね。
(2014/2015シーズンまでは3価ワクチンでした)
ワクチンを製造する
インフルエンザのワクチン製造をするメーカーは阪大微研、デンカ生研、KMバイオロジクス、第一三共などです。
製造工程をみるといかに多岐にわたるかが分かります。
- 有精卵を準備して孵化鶏卵を育てる
- 孵化鶏卵にインフルエンザワクチン製造株を接種する
- 孵化鶏卵を培養しインフルエンザウイルスを培養する
- 孵化鶏卵からウイルス培養液を採取する
- ウイルス培養液を濃縮・精製する
- 不純物を除去する
- それぞれの株の入った原液を混ぜ合わせ、最終バルクができる
- バイアル瓶に小分けする
このようにインフルエンザワクチンの製造にはいくつもの工程があります。
インフルエンザワクチンは鶏を飼育して有精卵を大量に使う必要があるので手間と時間がかかるわけですね。
そのためいざ足りないとなった場合でも追加して作ることができないのはもちろん、途中の製造工程(培養)でウイルスが増殖しないといったトラブルが起きる可能性も毎年あるわけです。
実際2017年には製造開始後にウイルスの増殖具合が悪いことが判明し、急遽もとになる株を変更する事態となりました。
医療機関へ納品される
バイアル瓶に小分けされた製品は、メーカー独自の検定と国立感染症研究所で国家検定を経て、基準に合格したものが出荷されます。
今シーズンは新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時流行が懸念されるため、高齢者や小児へのインフルエンザワクチンの接種が日本感染症学会から推奨されています。
今年は国家検定に係る省令が改正されたため例年よりも出荷が早まる見込みのようです。
製造が順調にいっているようで何よりです。
9月末ごろから医療機関に納品されていくようです。
これからのインフルエンザワクチン
日本では皮下注として使用されているインフルエンザワクチンですが、海外では経鼻投与、皮内投与、筋注などさまざまな投与経路の製品があります。
また、米国では鶏卵を使用せず細胞培養や遺伝子組み換え法を用いて安定的に製造されている製品もあります。
いずれ日本国内でもさまざまな方法で利用できるインフルエンザワクチンが登場することが予想されます。将来的にインフルエンザワクチンは、HAに変異があったとしても効き目が変わらない新たなユニバーサルワクチンとして開発が進められているようです。
いずれ毎年のワクチンの供給に一喜一憂しないで済む日が来るかもしれませんね。
まとめ
インフルエンザワクチンができるまでについてまとめました。
毎年流行株が変化するため、毎年ワクチンを受ける必要があること
製造には手間と時間がかかっていること
がお分かり頂けたのではないでしょうか?
新型コロナウイルスのワクチンが待ち遠しい限りですが、まずは今冬の流行に備えてインフルエンザワクチンを打っておきましょう。
インフルエンザワクチンの効果についてはこちらの記事でまとめていますのでぜひご覧ください。
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