オミクロン株、どちらかというとインフルエンザに近くて軽症が多いっていうけど
それなら大したことなさそうね
オミクロン株が猛威を奮っています。
一方で軽症で済む、インフルエンザに近いという報道を聞いて、そんなに怖くないというイメージを持つ人が多いようです
果たして軽症だから安心なのでしょうか?
オミクロン株とインフルエンザウイルスの感染力と致死率の違いをもとに、オミクロン株の実態について解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
オミクロン株の感染力は?
感染力は基本再生産数や実効再生産数という数値で表します。
基本再生産数(R0)
基本再生産数とは
「まだ誰もその免疫を持っていない集団の中で、1人の感染者が次に平均で何人にうつすか」
を表しています。
インフルエンザのR0は2~3、麻疹は12~18と言われています。
実効再生産数(Rt)
実効再生産数は
「ある時点において1人の感染者が全感染期間に感染させる人数の平均値」です。
・1以上で増加傾向
・1未満で減少傾向を表します。
(宮城県ホームページを参考)
例えばRtが2の場合、1人が2人に感染させ、その2人が4人に感染させ、4人が8人に感染させ、と感染者は倍々に増えていきます。
東洋経済ONLINEのデータによると、オミクロン株流行前の新型コロナウイルスのRtは最大2程度でしたが、1/10の実効再生産数は5.71まで上昇していました。
ちなみに1/15時点では2.81に低下しています。
それにしても年が明けてからのオミクロン株の広がりは半端ないですね。
インフルエンザウイルスの実効再生産数は2程度と思われますので、比較するとオミクロン株の感染性は格段に上であることが分かります。
オミクロン株の致死率は?
インフルエンザウイルスの致死率は0.05%程度(およそ10000人あたり5人程度)と言われています。
実際、2019/2020シーズンのインフルエンザウイルスによる致死率は0.047%でした。
【関連記事】【2019/2020シーズン】インフルエンザウイルスの致死率は?
一方、新型コロナウイルスの致死率をこれまでの日本の感染者数(約177万人)と死亡者数(18400人)から計算すると、約1%になります。
世界全体ではおよそ2%弱(ただし地域によって差あり)
明らかに新型コロナウイルスのほうがインフルエンザウイルスよりも致死率は高いです。
それではオミクロン株の致死率はどれほどなのでしょうか?
まだ正式には論文化されていない報告ではありますが、カナダのオンタリオ州で行われた研究によると、デルタ株とオミクロン株の入院患者数、死亡者数を比較すると、オミクロン株による入院、死亡リスクはデルタ株よりも減少することが報告されています。(doi: https://doi.org/10.1101/2021.12.24.21268382)
入院
オミクロン株 0.51%(59人/11622人)
デルタ株 1.6%(221人/14181人)
→ 65%のリスク減少
死亡
オミクロン株 0.03%(3人/11622人)
デルタ株 0.12%(17人/14181人)
→ 83%のリスク減少
また、JAMA誌に掲載された研究では南アフリカでオミクロン株が流行した第4波では、これまでの流行時と比較して死亡率が低かったことが報告されています。(JAMA. 2021 Dec 30; doi: 10.1001/jama.2021.24868.)
死亡率
第1波 19.7%
第2波 29.1%
第4波 2.7%
最終的にオミクロン株の致死率がインフルエンザウイルスより高くなるのか低くなるのかは分かりませんが、少なくとも従来株に比べて致死率が高まるということはなさそうです。
オミクロン株は軽症だから大丈夫?
オミクロン株に感染したとしてもデルタ株より入院、死亡リスクが高くないなら、そんなに恐れることはないのでは?と思うかもしれません。
オミクロン株は病原性が低下しているとはいっても、重症化しないわけではありません。
医療従事者から見た軽症の定義は「酸素を必要としない程度の症状」であって、単なる鼻かぜを軽症と言っているわけではありません。
軽症だったとしても罹ればかなり生活に支障が出ますし、後遺症に悩まされる場合もあります。
【関連記事】【気になるコロナ後遺症】症状は?ワクチンの効果は?
オミクロンは軽症だから自分は大丈夫、と思い込むのはかなり危険です。
まとめ
オミクロン株とインフルエンザウイルスの感染力と致死率の違いについて解説しました。
オミクロン株は爆発的な感染力+それなりの病原性をもった厄介な変異株です。
オミクロン株が普通の風邪やインフルエンザウイルスレベルにコントロールできるということは今のところ期待できません。
私たちにできることは粛々と日々感染対策を行い、1日も早くワクチン接種率を高めること、これ以外にはありません。
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