・ルムジェブはヒューマログより早く効き、持続時間も短い製剤
・食後投与(20分以内)はあくまでもオプションで、食事開始時投与が基本
・ヒューマログ、ノボラピッド等の超速効型製剤から切り替える場合は、投与タイミングの違いについてしっかり説明しないと低血糖のリスクがある
・注射部位反応はヒューマログより気になるかも
インスリンリスプロといえば、ヒューマログですよね。
何が違うんですか?
同じものだけど、効き目が早くなるように改良されてるんですよ。
今回も、審査報告書でルムジェブについて確認していきましょう。
ルムジェブのコンセプト
ヒューマログ(インスリンリスプロ)は超速効型製剤として使用されていますが、ヒトの理想的なインスリン分泌パターンと比べるとまだ遅いため、投与は食直前(15分以内)と限定されています。
糖尿病患者さんの中には、
①食事量が定まらない場合
②食前の血糖値が低めでインスリン投与による低血糖が懸念される場合
など、あえて食事を開始してからインスリン注射を行う場面もしばしばあります。
ということで、
ルムジェブは「食事開始後であっても投与可能なインスリン」をコンセプトに開発されました。
すでにノボノルディスクファーマから発売されているフィアスプも同じコンセプトですね。
ルムジェブの特徴
ルムジェブは添加物として、トレプロスチニルナトリウムとクエン酸ナトリウムを加えることで、リスプロの吸収を速くしています。
投与部位での血流量の増加や、血管透過性の亢進が、リスプロの吸収促進に寄与していると考えられています。
添加物で薬の効き目が変わるとは面白いですね~。
ヒューマログとルムジェブの血中濃度の推移はこのような感じです。
立ち上がりはヒューマログより10分程度早く、30分で最高血中濃度に達します。
持続時間もヒューマログより80分程度短く、6時間でほぼ消失します。
早く効いて、あとまで残りにくいことが分かります。
有効性
国際共同第III相試験(ITRM試験)
対象:Basal-Bolus療法を実施中の18歳以上の1型糖尿病患者
デザイン:ヒューマログを対照とした無作為化部分的二重盲検並行群間比較試験
※ルムジェブorヒューマログを1日3回食前(食事開始の0~2分前)、又はルムジェブを1日3回食後(食事開始後20分)との比較
主要評価項目:ベースライン(投与期開始時)から投与26週時までのHbA1c変化量
結果です。
ルムジェブ食前投与群、ルムジェブ食後投与群のヒューマログ群に対する非劣性が示されました。
この結果について機構は、
食前投与だけでなく食後投与も含めて一定の有効性は示されている。
と理解を示しつつも、
本剤食後投与群の結果は、ヒューマログ群に対して劣る傾向が示唆されており、本剤の食後投与群と食前投与群を比較しても、投与26週時のHbA1c変化量、投与26週時の食後1時間及び食後2時間の血糖値上昇幅の変化量等について、本剤食後投与群と比較して本剤食前投与群でより良好な結果が得られている・・
ルムジェブ審査報告書P36
ことから、食後投与については別に議論したいとしています。
国際共同第III相試験(ITRN試験)
対象:Basal-Bolus療法を実施中の18歳以上の2型糖尿病患者
デザイン:ヒューマログを対照とした無作為化部分的二重盲検並行群間比較試験
※ルムジェブまたはヒューマログを1日3回食前(食事開始の0~2 分前)との比較
主要評価項目:ベースライン(投与期開始時)から投与26週時までのHbA1c変化量
結果です。
ルムジェブ食前投与群のヒューマログ群に対する非劣性が示されました。
この結果について機構は、
ルムジェブ食前投与の有効性は認めつつも、
「この試験では食後投与の検討がされておらず、ITRN試験の結果も含めて推奨タイミングについては別に議論する」
としています。
最終的には専門家との協議を経て、推奨タイミングは
通常は食事の開始前の投与とし、必要な場合は食時開始後の投与とすることも可能
ただし、食前は食事開始時、食後は20分以内に投与することが分かるように注意喚起すること
と決定されました。
基本は食事開始時で、食後投与はあくまでオプションということですね。
安全性
RMPです。
低血糖
ルムジェブの作用はヒューマログと比較して速く、ヒューマログ群と比べて食事開始後早期の低血糖が多い傾向が認められています。
もしルムジェブをこれまでの超速効型インスリン製剤と同様のタイミング(例:食事開始15分前)で投与された場合、低血糖の発現リスクが高まる可能性があります。
RMP用資材で注意喚起がされています。
注射部位反応
全身性過敏症反応はアナフィラキシーショックというよりは、注射部位反応がメインと思われます。
ヒューマログと比較してルムジェブで明らかに高いです(トレプロスチニルナトリウムの影響とされています)。
しかしながら、ほとんどが軽度または中等度であり、臨床上問題になる可能性は低いと記載されています。(審査報告書P5, P46)
その他(ヒューマログとの切り替えについて)
ルムジェブとヒューマログと同様に単位換算することで問題はない、と記載されています。
まとめ
・ルムジェブはヒューマログより早く効き、持続時間も短い製剤
・食後投与(20分以内)はあくまでもオプションで、食事開始時投与が基本
・ヒューマログ、ノボラピッド等の超速効型製剤から切り替える場合は、投与タイミングの違いについてしっかり説明しないと低血糖のリスクがある
・注射部位反応はヒューマログより気になるかも
フィアスプも同じように考えてよいと思います。
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