コロナワクチンの希釈ってどうやればいいの?
いよいよ一般の方々へのコロナワクチン接種が本格化します。
ワクチン担当大臣の河野大臣曰く、4月26日の週からは高齢者向けのワクチンも十分供給されていくとのこと。
今までなかなか扱えなかったバイアルに実際に触れる機会も増えるはず。
今回は実際ファイザーのワクチン【コミナティ】を扱ううえで役にたつポイントについて解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供することを心がけています。
ワクチン供給量は激増する!
これまでワクチンの供給量が足りない、足りないとさんざん言われてきましたが、5月からは供給量が激増します。
この表はファイザーワクチンの輸送予定を示したものです。
5月からは桁違いに増えることが分かりますね。
今までワクチンを見たこともない、触ったこともない医療従事者もファイザーのワクチン、コミナティ筋注を希釈してシリンジに充填するという作業を実際にすることになります。
どんなことに注意すれば良いのかについて解説していきます。
ファイザーワクチン「コミナティ筋注」は希釈が大変
この記事を書いている時点(2021年5月2日)では国内で流通しているのはファイザーのワクチンのみ。
今後、日本で使用される予定のワクチンは「モデルナのmRNAワクチン」と「アストラゼネカのウイルスベクタ―ワクチン」です。
モデルナのワクチンは5月21日に承認されるのでは?という情報があります。
同ワクチンは国内流通を担う武田薬品工業が3月に厚生労働省に承認申請していた。承認されれば米ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンに続き2例目となる。
— 溶接面 (@ouWfJZg1aV91LID) May 2, 2021
米モデルナ製ワクチンを21日にも承認、日本政府が調整-報道 https://t.co/KkJ6qBCIc9 @businessから
新たなワクチンが使えるようになるのは喜ばしいことです。
実はモデルナ、アストラゼネカのワクチンは希釈が不要なのに対し、ファイザーのコミナティ筋注は生食で希釈する必要があります。
この「生食で希釈する」作業というのが一つのポイントで、希釈する医療従事者にとっては非常に神経を使う作業なのです。
生食での希釈のしかた
コミナティ筋注は原液が0.45mLで、生食1.8mLを加えることで2.25mLになります。
希釈する生食の量を間違えると、最終的な濃度に影響しますのでダブルチェックは忘れずに!
埼玉県病院薬剤師会が作成した動画・画像資料がとても分かりやすいので引用させていただき、手順を紹介します。
まずシリンジの目盛りは1.8mLに正確に合わせ、バイアルに針を刺します。
(動画では実際のバイアルではなくデキサート注で代用しています)
このとき途中で力を抜かずに、最後まで生食を入れ切ることが大事です。
続いてシリンジを抜く作業です。
入れ切ったら、力を抜きます。
バイアル内が陽圧になっているので自然とシリンジの内筒が元の位置に戻ってきます。
1.8mLの空気が抜けたら針を抜きます。
このとき針の中に入っている微量な生食がシリンジ内に戻ってきますが、バイアル内には戻さないでくださいね!
希釈されたコミナティの濃度が薄くなって、ワクチンの効果に影響しかねないからです。
この点に関して、海外の動画では、針内の生食もバイアルに入れてしまっているように見えるものもありました。
日本人ならではの視点で、細かいという気もしますが、正確さという点では間違いないです。
希釈したコミナティを転倒混和する
コミナティはmRNAワクチンなので非常に不安定です。
温度管理だけでなく、操作中の衝撃や、直射日光・室内光による分解にも注意が必要です。
モデルナのワクチンもmRNAワクチンですので、転倒混和の際は同様の扱いが必要ですね。
コミナティを0.3mLずつ分注する
いよいよ最終段階です。
接種用のシリンジ(1mL)と針(25G)をつけ、バイアルから0.3mLずつ抜いていきます。
全量が2.25mLなので、理論的には7回分吸えるはずなのですが、注射器と針内にわずかな薬液が残ってしまう(デッドボリュームといいます)ので、5回もしくは6回が限度ということになります。
この作業で最も大事なのは空気を抜く作業ですね。
シリンジの壁やゴム栓付近についたごく小さな空気(minor bubble)は無視してもOKですが、大きな空気(major bubble)は抜いておかないと正確に測れません。
ASHP(米国病院薬剤師会)でも同様の注意喚起がされています。
空気がうまく抜けない時は、一度バイアル内の空気を吸って大きな空気にまとめてしまう、とやりやすいと思います。
よくやりがちなのが、空気を抜こうとして爪でパンパンとはじく動作です。
これはすでに説明したようにmRNAが壊れる可能性があるので、避けたほうがよいです。
ASHPもtappinngは最小限に、と言っていますね。
ここでもダブルチェックは忘れずに。
まとめ
コミナティの希釈方法について解説しました。
これからどんどん接種回数が増えていきますので、希釈する際は正確な手技を知ったうえで臨んでいただきたいと思います。
事前のシミュレーション、実技講習は十分に行ってくださいね。
他にも参考になるサイトもご紹介しておきます。(リンクは貼っていません。検索してみてください)
【滋賀県病院薬剤師会】薬剤師向け新型コロナウイルスワクチン希釈・分注手順の動画
【宇都宮薬剤師会】ワクチン希釈手順の解説 訂正版
【千葉大学病院公式チャンネル】ワクチン希釈の手順(医療従事者の方へ)
【市立三次中央病院監修】新型コロナワクチンの取り扱い
患者さんから説明を受けた時のために知っておくとよいポイントがまとまった書籍もあります。
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