オミクロン株が急速な広がりをみせています。
ワクチン未接種の子供たちへの感染も増えており、一刻も早い子供たちへのワクチン接種が急がれます。
2022年1月21日、厚生労働省より「コミナティ筋注5～11歳用」が特例承認されました。
大人用のワクチンとどう違うのでしょうか？
大人用ワクチンが子供には使用できない理由、希釈方法や取り扱い方の違いについて解説します。
【この記事を書いた人】
病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。
子供用のワクチン「コミナティ筋注5～11歳用」とは？
「コミナティ筋注5～11歳用」はファイザー社のワクチンです。
12歳以上に使用されてきた「コミナティ筋注」と成分は同じものを使用しています。
2022年1月時点で12歳以下（5～11歳）の子供たちに使用可能な新型コロナワクチンはファイザー社のものだけで、モデルナ社やアストラゼネカ社のワクチンは使用できません。
5～11歳の子どもたちへの効果は十分に保証されています。
また今のところ安全性についても懸念される副反応は認めていません。
【関連記事】【コロナワクチン】5～11歳の小さい子供たちの副反応は？
大人用ワクチンは代わりに使えない
「コミナティ筋注5～11歳用」は大人用の「コミナティ筋注」とは異なる製品です。
違うものであることが分かるように、わざわざバイアルキャップの色を変えています。
コミナティ筋注用 製品情報（12歳以上） (pfizer-covid19-vaccine.jp)より
大人用ワクチンは子供には使えません。
理由は子供用のワクチンは大人用よりも量が少ないためです。
具体的には1人あたりの有効成分（トジナメラン）の投与量が
大人用が30μg、子供用が10μg
となっており子供用は大人用の1/3の量になっています。
大人用を薄めて使えば良いのでは？
「コミナティ筋注5～11歳用」が実際に使用可能になるのがいつからかはまだ分かりません。
2022年3月頃になるのでは？と予測もあります。
急ぐなら大人用のワクチンを使用すれば良いのでは？と思う方がいるかもしれませんが、そうはいきません。
理由は臨床試験で使用された製品ではないからです。
医薬品は効果、安全性を担保するには決められた方法で製造されたものを使うのが前提ですからね。
その他にも現実的に難しい理由がいくつか考えられます。
大人用の量を1/3にしようとすると、量が少なすぎてシリンジで吸い取ることが難しい（測定誤差が大きくなる）
大人用のバイアルを使って生理食塩液で3倍希釈するには、溶解量が多すぎる
そもそも子供用として確保してあるワクチンがない（または少ない）
大人用のワクチンを使いたい気持ちは分かるのですが、実際には難しいということになります。
希釈方法、取り扱い方法の違いは？
「コミナティ筋注5～11歳用」1バイアル中には1.3mlの原液が入っています。
1バイアルを生理食塩液1.3mlで希釈し、専用の針とシリンジで0.2mlずつ吸い取ります。
理論的には13人分採取できますが、針とシリンジのデッドボリュームがあるため実際には1バイアルから10人分しか採取できません。
具体的な希釈手技についてはこちらをどうぞ。
【関連記事】【コロナワクチン】正しいコミナティ筋注の希釈のしかた
その他の違いは、大人用と比べて保管期間が延長されていることです。
☆「コミナティ筋注」
冷蔵庫（2～8℃）での保管期間 1か月
室温解凍後の保管期間 解凍および希釈を2時間以内に行う
希釈後は2～30℃で6時間以内に使用
☆「コミナティ筋注5～11歳用」
冷蔵庫（2～8℃）での保管期間 10週間
室温解凍後の保管期間 解凍開始から24時間以内
希釈後は2～30℃で12時間以内に使用
保管期間が延長されている理由は未確認ですが、濃度が低くなったことで有効成分の安定性が向上したせいなのかもしれません。
調製ミスに注意
大人用と子供用の異なる製剤が登場したことで、取り違えや希釈間違いなどのミスが発生することが想定されます。
現場では常にダブル・トリプルチェックが行われる必要があります。
この1年でコミナティ筋注用の調製に慣れた薬剤師が多くいますので、できるだけ薬剤師が関わることでミスを最小限にできると思います。
接種会場では大いに薬剤師を活用してもらいたいです。
まとめ
5～11歳用のコロナワクチンが承認されましたが、大人用の製品と異なるのでその取り扱いにはいくつか注意が必要なことが分かりました。
調製方法や保管期間は事前によく確認しておきましょう。
対象となる子供たちへの接種がスムーズに進むことを期待します。
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