このページの要点は以下のとおりです。
今回は腎臓がんの薬ですね。
ネーミングの由来はなんですか?
カボザンチニブの「カボ」と、MET(メット)という受容体の名前をくっつけています。
それでは今回も審査報告書で確認していきましょう。
カボメティクスの特徴
カボメティクスは、チロシンキナーゼを阻害する経口の抗悪性腫瘍剤です。
海外では2019年11月時点で47ヵ国で承認されています。
血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(MET)、growth arrest-specific6(GAS6)受容体(AXL)など複数のチロシンキナーゼ 伝達を阻害することが特徴です。
最近はどんどん新しい伝達経路が分かってきてるんですね。
ついていけない。。
がんは、特定のシグナル伝達経路を阻害すると、恒常性を維持するために他のシグナル伝達経路を活性化して耐性を獲得していくそうです。
カボメティクスは、複数のシグナル伝達を阻害することで耐性を獲得した例にも効果を発揮することが期待され開発が進められた薬剤です。
有効性
海外第Ⅱ相試験(CABOSUN試験)
対象:化学療法歴のないintermediate/poorリスクの根治切除不能または転移性の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)患者
デザイン:スーテントとの非盲検無作為化比較試験
主要評価項目:PFS(無増悪生存期間)
結果です。
スーテント群に対するカボメティクスの優越性が示されました。
国内第Ⅱ相試験(2001試験)
国内19施設で、日本人での有効性・安全性を検討した試験です。
対象:血管新生阻害剤(スーテント、ヴォトリエント等)による治療後に増悪した根治切除不能または転移性の淡明細胞型RCC患者
デザイン:非盲検非対照試験
主要評価項目:奏効率
結果です。
血管新生阻害剤の前治療歴があっても、CR(Complete Response)+PR(Partial Response)が7例/35例で奏効率20%という結果でした。
海外第Ⅲ相試験(METEOR試験)
最後はこちらです。
対象:血管新生阻害剤(スーテント、ヴォトリエント等)による治療後に増悪した根治切除不能または転移性の淡明細胞型RCC患者
デザイン:アフィニトールとの非盲検無作為化試験
主要評価項目:PFS(無増悪生存期間)
アフィニトールは試験実施時点で最も治療成績が良かったことから対照群として選定されています。
それでは結果です。
アフィニトール群に対するカボメティクスの優越性が示されています。
機構は、主要評価項目をPFSではなくOS(全生存期間)を設定することが適切であった、
としながらも
METEOR試験におけるPFSの優越性が示されたこと、副次評価項目のOSでも統計学的に有意な延長が認められたこと、2001試験で一定の奏効率があったこと、
を総合的に評価しています。
既存の薬との比較試験で勝っているという点は評価できますね
安全性
RMPを確認します。
副作用は既存のマルチキナーゼ阻害薬のリスクを超えてはいないようですが、
高血圧、創傷治癒合併症、膵炎、肝機能障害、下痢、手足症候群、消化管穿孔、血栓塞栓症は対照群よりもカボメティクスのほうが高頻度の傾向があることに注意が必要です。
作用機序的に高血圧、下痢、手足症候群、血栓塞栓症はアフィニトールより頻度が明らかに高いです。
副腎機能障害は頻度は低いものの、METEOR試験ではカボメティクスにのみ認めた副作用のため、潜在的リスクとされています。
肝機能障害時の投与量
海外第Ⅰ相試験において、軽度肝機能障害(Child-Pugh分類A)でAUC1.81倍、中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)でAUC1.63倍というデータがあります。
(審査報告書P27)
これに基づいて1段階~2段階への減量を推奨したほうがよいケースがあるかもしれません。
減量する際は20mg製剤を使います。
カボメティクスは20mgと60mg製剤がありますが、両製剤の生物学的同等性は示されていないため、60mg投与時は20mg3Tで代用はできません。
重度肝機能障害(Child-Pugh分類C)は検証されておらず不明なため、RMPでも重要な潜在的リスクとされています。
腎機能障害時の投与量
腎機能に関しては、カボメティクス投与後72時間までに尿中未変化体は検出されず、主に代謝物M5、M6、EXEL-5366が検出されたと記載があること(P26)から尿中排泄率は低いことが分かります。
海外第Ⅰ相試験の結果(P28)からも腎機能による影響はあっても軽微ですので、腎機能障害時の投与量調節はあまり必要なさそうです。(ただし重度腎機能障害時のデータはありません)
相互作用
カボメティクスは主に薬物代謝酵素CYP3A4で代謝されます。
CYP3A4誘導薬であるリファンピシンとの併用ではAUCが0.23倍に低下していますので、薬効が期待できない可能性があります。
また、CYP3A4の強い阻害薬であるケトコナゾールは添付文書では併用注意となっていますが、併用時のAUCは1.38倍程度というデータです(P27)。
PISCSの概念をもとにカボメティクスのCYP3A4寄与率(CR)を計算すると約0.28ですので、それほど強い基質薬ではなさそうということがわかります。
ちなみに、カボメティクスは食事の影響でAUCが増加するので、食事の1時間前から食後2時間までの間は投与を避けるとなっています。
※PISCSについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
臨床的位置づけ
機構は、カボメティクスは「根治切除不能または転移性腎細胞癌」対する治療選択肢の一つとして位置づけられる、と判断しています。
理由としては、以下をあげています。
・海外では化学療法歴のない淡明型RCC患者にも推奨されている
・METEOR試験ではIMDCリスク分類がfavorable、intermeidate、poorリスクの患者集団で明確な差を認めておらず、どのリスク分類でも有効性が期待できる
・試験の対象とされなかった非淡明細胞型RCC患者であっても、国内診療ガイドラインでは組織型ごとに治療法が区別されておらず、非淡明RCC患者に対しても淡明細胞型RCCに準じた治療が行われている
使い分けについては、以下のように記載があります。
機構の基本的なスタンスは、一次治療の場合は既承認の薬剤を優先させること、となっています。
◎一次治療
・favorableリスクの場合
スーテント、ヴォトリエントを優先
・intermediate/poorリスクの場合
オプジーボ+ヤーボイ、ヴォトリエント、(カボメティクス)
◎二次治療
・オプジーボ、インライタ、カボメティクス(ただし、使い分けは不明)
NCCNガイドラインでは、
一次治療にトーリセル、インライタ、アバスチン+インターフェロンなど、二次治療にアフィニトール、ヴォトリエント、スーテントなど多数の薬が記載されていて、この領域は混沌としていることが分かります。
まとめ
新薬の評価を自分でしてみると、薬剤師のスキルアップになりますよ。
こちらの記事もどうぞ。
薬剤師に必要なスキル~新薬を評価する方法~
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