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【コロナ治療薬の光と影】消えていった薬、話題の新薬

コロナ治療薬感染症
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コロナに効く薬っていっぱいあったような・・

最近めっきり聞かない薬もあるわね

コロナ治療薬が話題です。

新薬が次々に登場する一方、かつては一世風靡したものの消えていった薬もたくさんあります。

今回はそんなコロナの治療薬たちのてん末と話題の新薬について解説します。

【この記事を書いた人】

管理人
管理人

病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。

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消えていったコロナ治療薬

オルベスコ®(シクレソニド)

オルベスコ® 製品情報サイト より

オルベスコ®は気管支喘息の吸入薬として使用されている薬です。

2020年3月に神奈川県の病院から効果がありそうだという報告がされてからコロナ治療薬として注目を浴びました。

私の病院でもちょうどダイヤモンドプリンセス号の感染拡大が話題になった頃に急遽取り寄せました。

報告書では「重症肺炎への進展防止効果が期待される」と結論づけられましたが、その後国立国際医療研究センターが中心となりランダム化比較試験が行われました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状・軽症患者に対するシクレソニド吸入剤の有効性及び安全性を検討する多施設共同非盲検ランダム化第Ⅱ相試験(RACCO study)

対象:肺炎のない軽症COVID-19患者
主要評価項目:肺炎増悪率
結果:
オルベスコ®群 41例中16例(39%)
対症療法群 48例中9例(19%)
リスク比 2.08(90%信頼区間 1.15-3.75), p=0.057

この研究で分かったことは、なんと!対症療法群と比べてオルベスコ®投与群の方が有意に肺炎増悪が多かったということ。

というわけで、無症状・軽症のCOVID-19患者に対するオルベスコ®の投与は推奨できないと結論づけられています。

海外の研究もいくつかありますが、オルベスコ®の有用性を示唆する結果は出ていません。

アビガン®(ファビピラビル)

アビガン® 製品情報サイト より

アビガン®はインフルエンザ治療薬として開発されましたが、結局効果が認められず承認には至らなかった薬です。

しかし作用機序が他の抗ウイルス薬とは異なることから「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(但し、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」に限定して承認されていました。

今回新型コロナウイルスがRNAウイルスであることから効果が期待されていました。

【関連記事】アビガンの効果が期待されているのは「作用の仕組みが新しい」から

2021年5月に発表されたメタ解析では、プラセボと比較して

入院7日後の症状改善率はアビガン®のほうが高い

入院14日後の症状改善率はアビガン®と差がない

ウイルス排泄時間は早まらない

呼吸不全は減らさない

ICU入室率は減らさない

死亡は減らさない

というわけで、よく分からないというのが現状です。

国内で臨床試験が進行していますが、果たして有効な治療薬として結果が出せるかどうかは不透明です。

催奇形成が明らかになっている薬なので、使用するにしても厳重な管理のもと使用することが求められます。

カレトラ配合錠®(ロピナビル・リトナビル)

カレトラ配合錠® 製品情報サイト より

カレトラ配合錠®はHIV感染症治療薬として使用されている薬です。

カレトラ配合錠®はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)に有効かもしれないと言われていたため、新型コロナにも有効では?ということで、国内では初期のころに多く使用されていました。

2020年5月に世界的権威のある雑誌New England Journal of Medicine に標準治療と比較したカレトラ配合錠®の効果について検証した論文が発表されました。

対象:コロナ陽性の肺炎患者(SpO2 94%未満)

主要評価項目:臨床的改善までの時間

結果:

臨床的改善までの時間に差なし

28日間の死亡率に差なし

この論文の発表を受けてカレトラ配合錠®の需要はなくなってしまいました・・

カモスタット、ナファモスタット

フオイパン錠® 製品情報サイト より

カモスタット、ナファモスタットは膵炎や播種性血管内凝固症候群などの治療薬として使用されています。

ナファモスタットは東大の研究グループがコロナウイルスが感染する最初の段階であるウイルス外膜と感染する細胞の細胞膜との融合を阻止することで、ウイルスの侵入過程を効率的に阻止する可能性がある、と発表し注目を集めました。

新型コロナ治療薬 ナファモスタット吸入製剤の共同開発で東大、理研、日医工、第一三共が基本合意(2020/06/09 ミクスonline)

2021年3月に開始された臨床試験ですが、第Ⅰ相で中止となってしまいました。

2021年6月15日 第一三共プレスリリース より

カモスタットに関しても第Ⅱ相試験の結果が思わしくなかったため開発中止となってしまいました。

2021年7月5日 日医工 プレスリリース より

パルミコート®(ブデソニド)

アストラゼネカ社 製品情報サイトより

オルベスコ®と同じ吸入ステロイド薬です。

オルベスコ®と対照的に2021年8月Lancetに掲載された論文パルミコート®の有効性が示唆されています。

対象:外来の軽症COVID-19で重症化リスクのある患者(65歳以上もしくは50歳以上で合併症あり)

主要評価項目:自覚症状の改善までの時間、入院率、死亡率

結果:

自覚症状の改善までの時間 通常ケア群と比較して2.94日減(11.8日 vs 14.7日)

28日時点の入院または死亡 パルミコート®群6.8% vs 通常ケア群8.8% (有意差なし)

オープンラベル試験(医療スタッフや患者さん本人がどのような治療を受けているのか知っている状態で行われる試験)であり、解釈に注意が必要です。

良さそうな結果ではあるのですが、コロナ治療薬として必須の薬剤かと言われると??です。

他にも使える薬があるので。

しかし他の治療薬と比較すると頭ひとつ抜きんでた治療薬と言えるでしょう。

今後の質の高い研究に期待したいですね。

ストロメクトール®(イベルメクチン)

マルホ 製品情報サイト より

ストロメクトール®といえば疥癬、寄生虫用の薬。

まさかコロナに使われるなんて思ってもいませんでしたが、効果があるというのは全くのデマです。

製造元の企業自ら「科学的根拠はない」と断言しています。

MSD製薬 新型コロナウイルス感染症流行下におけるイベルメクチンの使用に関する
Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のステートメント より

このBBC Newsは面白いです。

馬用のイベルメクチンを人間が飲んでいるという衝撃の内容です(-_-;)

ぜひご覧あれ。

話題の新薬

ゼビュディ点滴静注液®(ソトロビマブ)

ゼビュディ®はコロナ流行状況を鑑みて2021年9月27日特例承認された薬です。

製造販売はグラクソ・スミスクライン株式会社です。

ゼビュディ®がどんな薬かと言うと

ゼビュディは新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2による感染症)の症状が重くなることを防ぐためのお薬です。本剤に含まれる有効成分は「ソトロビマブ」という抗体※です。ソトロビマブは体内で新型コロナウイルスに結合してヒト細胞へのウイルスの侵入を防ぎます。

※抗体とは?:ウイルスや細菌など、特定の異物(抗原)に対して特異的に結合し、それらの異物を体内から除去するためにはたらく分子です。

ゼビュディによる治療を受ける患者さん・患者さんのご家族の方へ より

現在コロナ軽症患者の抗体療法としてロナプリーブ®(カシリビマブ・イムデビマブ)が使用されていますが、ゼビュディ®はロナプリーブ®に続く2番目の抗体治療薬となります。

ロナプリーブ®同様、酸素療法や人工呼吸などを要する重度の新型コロナウイルス感染症には使用できません。

気になる結果(COMET-ICE 試験)ですが

対象:SARS-CoV-2陽性、酸素飽和度94%以上で肥満、慢性腎臓病などのリスク因子がある人

主要評価項目:29日目までの入院又死亡

結果:

ソトロビマブ群 1%(3/291 例)vs プラセボ群 7%(21/292 例)

リスク比 0.15[0.04, 0.56]、p=0.002

ソトロビマブ審査報告書 より

入院や死亡リスクの減少が確認できます。

ゼビュディ®はロナプリーブ®同様、デルタ株への効果も検証されていますので、新たな抗体療法の選択肢として期待されています。

その他の経口薬

新型コロナウイルス感染症治療薬として経口薬が注目されています。

世界初の経口薬はどうやらMerck社のモルヌピラビルになりそうです。

【関連記事】モルヌピラビルの特徴は?薬剤師からみた注意すべき点

ラインナップがけっこう多く、実用化に向けて臨床試験が進んでいます。

概して抗ウイルス薬は開発が難しいと言われていますので実用化されるかは分かりませんが、注目していきたいと思います。

まとめ

コロナが流行した直後にもてはやされた多くの薬は良い結果を出せずに消えていきました。

当初はうわさ話のレベルで安易に使われることもあったかもしれませんが、情報を鵜呑みにして飛びつかないこと。

医学は日々進歩していますので、臨床試験の結果で治療方法がコロリと変わることはよくあります。

常に最新の情報に触れておきたいですね。

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