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デキサメタゾン供給不足から学ぶステロイド服薬指導のポイント

デキサメタゾン供給不足感染症
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ステロイド剤であるデキサメタゾン錠が不足しています。

新型コロナウイルス感染症に使われる局面が増えてきているためです。

ステロイドにはさまざまな作用があることで有名ですが、デキサメタゾンがまさかCOVID-19に効果があるなんて思いもしませんでした。

まさにステロイドは魔法の薬。

今回のデキサメタゾン供給問題を通してみえるステロイドの多様な作用と服薬指導のポイントについて解説します。

【この記事を書いた人】

管理人
管理人

病院薬剤師です。医療やくすりに関する正しい情報を提供するように心がけています。

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デキサメタゾン錠供給不足の背景

デキサメタゾン錠が不足している理由は世界的にCOVID-19に対しての需要が高まっているためです。

デキサメタゾンは英国で行われた入院患者を対象とした大規模無作為化試験において、標準治療を行った群と比較して死亡率の低下が見られたことから、COVID-19に対する薬物治療の選択肢の一つとなっています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版より

なお、デキサメタゾンは酸素投与を必要としないような軽症の患者に使用した場合には効果を認めていない(どころかむしろ重症化リスク、死亡リスクを増加させる PMID:34347106)ことから、酸素療法が必要な中等症Ⅱ以上での使用が推奨されています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版より

このようにデキサメタゾン錠は本来なら入院治療が必要な状況でしか開始されないはずですが、

すぐに入院ができない場合に万が一に備えて内服薬を処方されるケースが多くなっている

と予想されています。

あまり想像したくありませんが、実際には軽症の患者に対しても外来でデキサメタゾンが処方されて、結果として症状が悪化したというケースもあるようです。

厚生労働省はデカドロン錠®の製造元である日医工に増産を呼び掛けていますが、急激な需要に耐えられなくなっているという状況が起きています。

がん薬物療法におけるデキサメタゾン

COVID-19に対する需要の高まりで圧迫を受けているのが「がん領域」です。

デキサメタゾンはもともと抗がん剤治療を行う際の制吐目的で使われています。

がん化学療法では使用する薬剤によって催吐リスクが決まっており、高度・中等度・軽度・リスクなしに分類されています。

デキサメタゾンは軽度以上のリスクのレジメンに組み込まれているため、多くのがん患者さんに処方されているのです。

日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会は2021年9月9日に合同で「デキサメタゾン内服薬の供給不足下におけるがん患者の薬物療法に関する関連学会からの合同声明文」を出しました。

この声明では、デキサメタゾンが入手困難な場合

  • デキサメタゾンの使用日数を短縮する
  • 5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、パロノセトロンなど)、NK1受容体拮抗薬(アプレピタント)、抗精神病薬(MARTA:オランザピン)、メトクロプラミド等で代用する
  • デキサメタゾンを中止して様子をみる

といった回避策が提案されています。

がん化学療法の制吐目的にルーチンにステロイドが処方されますが、なかには必要性が乏しい、副作用等で使用が適切ではない場合もあると思われます。

ステロイド一辺倒の制吐療法を再考するチャンスととらえられるかもしれませんね。

患者さんへの指導のポイントは?

ステロイドは魔法の薬

今回のデキサメタゾン供給問題からステロイドが

  • 抗炎症作用
  • がん化学療法に伴う吐き気と嘔吐の軽減

を目的に使用されていることが分かります。

しかしステロイドの作用はこれだけではありません。

  • アレルギーや過敏症予防
  • 血液腫瘍に対するレジメンの一部(抗悪性腫瘍効果)
  • 緩和ケアにおける悪性腫瘍による疼痛や浮腫の抑制
  • 進行がん患者のがん関連疲労緩和

といった作用も併せ持っています。

まさにステロイドは「魔法の薬」

私は患者さんにステロイドの説明をするとき

管理人
管理人

ステロイドって魔法の薬なんですよ~

と説明しています。

こうすると患者さんに興味を持って聞いてもらえます。

ステロイドの経口投与(全身投与)が必要な状況の多くは緊急時もしくは疾患の活動性が高い場合

そのため患者さんには用法用量を指示通りに確実に服用してもらう必要があります

確実な服用は副作用を回避するという意味でも大事なので、患者さんの興味をしっかり惹きつける指導が必要だと思います。

副作用の説明

ステロイドと聞いて服用に拒否感を感じる患者さんもいます。

最近もステロイド外用剤を使うことの危険性と脱ステロイドを推奨するようなTV番組が、日本皮膚科学会等の関連団体から抗議を受けたというニュースがありましたね。

日本アレルギー学会ホームページより

薬剤師は副作用について過度に心配させないような指導が必要です。

指導のポイントとしては

  • 副作用はどの薬でも起こり得るが、指示通りに適切に服用すれば過度に心配する必要はない
  • ステロイド剤のデメリットがメリットを上回ると判断しているため処方されている

ことを伝える

  • 副作用の早期発見に努める姿勢を示す
  • 患者さんとよく会話する

ことかなと思います。

とにかく確実に服薬してもらえるように努めましょう。

まとめ

デキサメタゾン供給不足問題からみえるステロイド剤の作用、服薬指導のポイントについて解説しました。

ステロイドはハイリスク薬としてしっかり管理すべき薬剤ですので、重要性について患者さん自身に十分理解してもらえるような指導が必要です。

明日からの服薬指導に活かしていただければ幸いです。

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