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審査報告書・RMPからみる「リベルサス錠」(セマグルチド)

審査報告書・RMPからみるリベルサス錠糖尿病
審査報告書・RMPからみるリベルサス錠(セマグルチド)
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このページの要点は以下のとおりです。

・リベルサスはGLP-1作動薬初の経口薬で、新規添加物SNACを配合したことでDDSを実現した

・有効性は既存のGLP-1作動薬と同等であることが検証

・SNACの安全性が気になるが、現時点のRMPはオゼンピックと同様の記載

・服用方法の注意事項の多さ、服薬遵守率がkeypointになりそう

今回もGLP-1ネタです。

セマグルチドって聞いたことあるような。

管理人
管理人

少し前に承認されたばかりのオゼンピック皮下注と同じ成分です。
GLP-1アナログ初の経口剤ってかなり画期的だと思います。

 

オゼンピック皮下注についての記事はこちら。
審査報告書・RMPからみる「オゼンピック皮下注SD」(セマグルチド)

【追記】
詳細は不明ですが、2020年8月18日リベルサスの8月薬価収載は見送りになったと日刊薬業が発表しています。(薬価の折り合いがつかなかった?)
2020年11月18日にようやく薬価収載になるようですね(^^;

 

それでは審査報告書を読んでいきましょう。

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リベルサス錠の特徴

もともとセマグルチドは分子量が大きいため、消化管での透過性が低い薬剤であることに加え、胃の分解酵素で分解されてしまうため、経口投与には適してはいませんでした。

その欠点を補うべく開発されたのがリベルサスです。

リベルサスが経口投与可能になったのはサルカプロザートナトリウム(SNAC)という添加物を配合したためです。

SNACはセマグルチドの胃酸による分解を防ぎ、さらに胃からの吸収も促進する効果を持っていたのでした。

 

管理人
管理人

いわゆるドラッグデリバリーシステ厶(DDS)というやつね。
SNACが医薬品の添加物として使用されたのも初めてのようです。

リベルサスは米国では2019年9月、欧州では2020年4月に承認されています。(2020年6月現在)

 

単独療法における有効性

国内第Ⅱ/Ⅲ相単独療法試験(4281試験)

対象:食事・運動療法またはそれに血糖降下剤1剤を加えた治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者

デザイン:プラセボまたはリラグルチド(ビクトーザ)0.9mgを対照とした無作為化並行群間比較試験

主要評価項目:ベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量

  

結果です。

リベルサス 審査報告書P32

投与26週時点でのHbA1c変化量についてプラセボ群に対する優越性を認めています。

リベルサス投与量については用量依存的な効果が認められています。

HbA1c低下については、リベルサス7mgとビクトーザ0.9mgがほぼ同等と読み取れます。

国際共同第Ⅲ相単独療法試験(4233試験)

対象:食事・運動療法で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者

デザイン:プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(プラセボ、リベルサス3mg、7mg、14mg)

主要評価項目:ベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量

結果です。

リベルサス 審査報告書P39

主要評価項目であるベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量について、リベルサス3mg、7mg、14mgのプラセボ群に対する優越性が示されています。

 

管理人
管理人

以上の結果から、リベルサス単独療法における有効性は期待できる、としています。

併用療法における有効性

国内第Ⅲ相併用療法長期投与試験(4282試験)

対象:食事・運動療法またはそれに血糖降下剤1剤を加えた治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者

デザイン:リベルサス+血糖降下剤1剤併用とデュラグルチド(トルリシティ)0.75mgを対照とした無作為化実薬対象並行群間比較試験

主要評価項目:ベースラインから投与52週時までのHbA1c変化量

結果です。

リベルサス 審査報告書P35

 

スルホニアウレア剤(SU)、グリニド、チアゾリジン(TZD)、α-GI、SGLT-2阻害薬とのいずれの併用療法でもHbA1c変化量が用量依存的に大きくなる傾向が認められています。

HbA1c低下の程度は、トルリシティ0.75mgとリベルサス7mg群が同程度と読み取れます。

国際共同第Ⅲ相併用療法長期投与試験(メトホルミン単独またはメトホルミンとSUの併用)(4222試験)

対象:メトホルミン単独またはメトホルミン+SU剤で十分なコントロールが得られていない2型糖尿病患者

デザイン:シタグリプチン100mgを対照とした無作為化二重盲検並行群間比較試験

主要評価項目:ベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量

結果です。

リベルサス 審査報告書P42

 

リベルサス7mg、14mgでシタグリプチン群に対する非劣勢が示されている一方、リベルサス3mg群ではシタグリプチン群(100mg)に対する非劣勢は示されていません

 

国際共同第Ⅲ相併用療法長期投与試験(メトホルミン単独またはメトホルミンとSGLT-2阻害薬との併用)(4224試験)

対象:メトホルミン単独またはメトホルミン+SGLT-2阻害剤で十分なコントロールが得られていない2型糖尿病患者

デザイン:プラセボ、ビクトーザ1.8mg対照のリベルサス14mgとの無作為化二重盲検並行群間比較試験

主要評価項目:ベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量

結果です。

リベルサス 審査報告書P46

リベルサス14mg群のプラセボに対する優越性ビクトーザ1.8mg群に対する非劣勢が示されています。

 

国際共同第Ⅲ相インスリン併用試験(インスリン単独またはインスリンとメトホルミンとの併用(4280試験)

対象:インスリン単独またはインスリン+メトホルミン併用で十分なコントロールが得られていない2型糖尿病患者

デザイン:インスリン+リベルサス併用群とのプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験

主要評価項目:ベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量

結果です。

リベルサス 審査報告書P49

 

ベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量について、プラセボ群に対するリベルサス3mg、7mg、14mgの優越性が示されています。

 

管理人
管理人

以上の結果から、リベルサスの各併用療法における有効性は期待できる、としています。

4222試験でリベルサス3mg群のシタグリプチン100mgに対する非劣勢が証明されていませんが、これはシタグリプチンの通常用量が50mgであるためで、機構はリベルサス3mgの有効性を否定するものではない、と判断しています。

 

安全性

2020年7月23日時点では(案)です。

RMPはオゼンピックと同じ内容で、SNACに関する記載はありません。

リベルサス 審査報告書P92

低血糖

オゼンピック同様、SU剤、インスリンとの併用時の低血糖に注意は必要なものの単剤もしくは他の薬剤との併用ではリスクは高くないとされています。

胃腸障害

14mg投与時に多く発現する傾向が認められています。

4224試験ではリラグリチド1.8mg群と比較してリベルサス14mg群のほうが発現割合が高い結果でした。

膵炎、胆嚢に関連する有害事象

既存のGLP-1作動薬を超えるリスクは示されていません。

心血管リスク

脈拍数増加の傾向が認められていますが、心血管イベントの増加は認められていない、とされています。

添加物SNACの毒性について

審査報告書P7にSNACの毒性に関する記載があります。

添加物のSNACについては、高用量で投与された場合に呼吸変化、心拍数増加、血圧低下、低血糖などの起こすことが分かっているのですが、ヒトへの影響は安全域が広いため問題が生じる可能性は低い、と判断されています。

また、生殖発生毒性試験では母動物に対する影響、特に細胞呼吸阻害が認められています。
リスクは低いとされていますが、胎盤通過、乳汁分泌についての情報提供は必要と記載されています。

 

管理人
管理人

最終的なRMPを確認するまで分かりませんが、SNAC自体新規化合物なので安全性はやや気になります。

 

服用時の注意点

ここは結構重要です。

・リベルサスは食事の影響で曝露量が低下するため、空腹時投与とされています。
また、投与後の絶食時間が長いほど曝露量が増加することから、投与後30分は絶食が推奨されています。

・飲水量については、50mLの水と120mLでは曝露量に大きな影響はありませんでしたが、240mLの場合にAUCが40%低下したことから、飲水量は120mL以下とされています。

・リベルサス以外の内服薬との同時内服でもAUCが34%低下するため、他剤との併用も30分以上は避ける必要があります。

・14mgを投与する際は、7mg2Tは使用できません。
7mg2Tとした場合にSNAC投与量が増加し、リベルサスの曝露量が低下する可能性があるため、と記載されています。(審査報告書P30)

・リベルサスは主な吸収部位が胃であるため、胃全摘をされている場合は十分吸収されない可能性があります。

 

管理人
管理人

水分量まで指示があるのは珍しいです。意外と制限が多いので気を付けましょう。

臨床的位置づけ

自己注射が導入の障壁になっていた患者、経口剤による治療を望む患者には最適な治療選択肢、と記載されています。

逆を言えば、経口投与は皮下注と比べて吸収に個人差が出やすいため、服用時の注意事項を守ること、毎日の服薬遵守ができなければリベルサスのメリットを生かすことはできないでしょう。

特に糖尿病患者さんは食直前薬・食後薬など服用タイミングが複雑な場合が多いので、リベルサスが加わることでさらにアドヒアランスが低下する可能性もあります。

管理人
管理人

RMP資材を使って十分な服薬指導をしないといけないということですね。

 

腎機能障害・肝機能障害時の投与量

腎機能障害者に関しては、薬物動態試験で腎機能の悪化による曝露量増大はありません(審査報告書P20)が、腎機能障害のある患者で胃腸障害の発現率が高い傾向があります。

肝機能障害者における投与量に関しては、薬物動態試験で肝機能の悪化による曝露量増大はなく(審査報告書P21)、特段の注意喚起は不要とされています。

 

相互作用

リベルサス 審査報告書P25

オゼンピック皮下注同様、臨床上問題となるCYP代謝酵素阻害や誘導はなさそうです。

胃酸分泌を抑制するPPIの使用に関しても影響はありません。

 

まとめ

以上、リベルサス錠についての概要をまとめました。

GLP-1作動薬に新規の剤型が登場したことは期待が持てる一方、服用時の制限が意外と多いこと、SNACの長期での安全性が確立していないことには注意が必要かもしれません。

せっかくの経口薬ですので、メリットを最大限に生かすために薬剤師は十分な患者指導を心がけたいものです。

 

・リベルサスはGLP-1作動薬初の経口薬で、新規添加物SNACを配合したことでDDSを実現した

・有効性は既存のGLP-1作動薬と同等であることが検証

・SNACの安全性が気になるが、現時点ではオゼンピックと同様の記載

・服用方法の注意事項の多さ、服薬遵守率がkeypointになりそう

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